井上尚弥が“モンスター”「最終章」と位置づけたスーパーバンタム級の標的…名前を明かさなかった4人のボクサーとは?
では4月に予定している転級第1戦で、この4人の標的の誰かと拳を交えることはできるのか。井上は以前「テストマッチはいらない」と語り、いきなりの世界挑戦を視野に入れている考えを明かしている。理想はフルトンか、アフマダリエフへの挑戦だが、現状は複雑で実現性は薄い。
アフマダリエフは、すでにIBFから日本で馴染みの深いマーロン・タパレス(30、フィリピン)との指名試合を命じられ対戦に合意している。ただ昨年に左拳を骨折していて、この試合は4月にズレこむ予定で対戦は難しい。フルトンは、1階級上げて2月25日にWBC世界フェザー級暫定王座決定戦として2年前に激闘を演じた前WBC&WBA世界王者のブランドン・フィゲロア(26、米国)と再戦を行うとの報道が流れた。
フルトンが、そのままフェザー級に転級するのか、スーパーバンタム級に戻って戦う気があるのかは不明だが、彼の動向が井上陣営にとっては最大の関心事となっている。もしWBCとWBOのベルトを返上すれば、そこが狙い目となるためだ。ただWBCは1位ネリと2位ホバニシャンにフルトンへの挑戦者決定戦を指令していて、フルトンが返上すれば、それが王座決定戦に格上げになる可能性がある。WBCは3位のデビット・ピカソ(22、米国)と4位のアリームにも挑戦者決定戦を指令しているが、アリームはWBOの1位にいて、この指令は受けないと考えられている。
フルトンがWBO王座を返上すれば、1位のアリームと井上との王座決定戦の可能性が出てくる。フルトンが返上しなければ、WBOはスーパー王者の井上に指名挑戦権を与える方向だが、1位のアリームが挑戦権を強く主張した場合、井上とアリームの間で挑戦者決定戦が行われる可能性もなくはない。いずれにしろフルトンの動向次第なので大橋会長も「交渉中」としか発言できないのだろう。あくまでも憶測だが、筆者は、4月の注目の初戦は、このアリームとの対戦となる可能性が高いと踏んでいる。
井上がプロ入りする際、父でトレーナーの真吾氏と共に「強い相手とマッチメイクすること」を条件にしたのは有名な話。なぜ井上は挑戦を続けるのか、その源泉を会見で問いかけてみた。
「自分の強さを追い求めていきたい、という本来の気持ちがある。バンタム級でやっていくにはモチベーションが難しく、パフォーマンスを下げてまで、ここでやりたいとは思わなかった」
バトラー戦の1週間後にはロードワークを始め年末の27日からジムワークも再開した。2月下旬からは、海外からパートナーを呼んで本格スパーリングを開始する予定となっている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)