J3沼津の監督に就任した”ゴン”中山雅史氏はチームスローガンを自らの筆でしたためた
J3沼津の監督に就任した”ゴン”中山雅史氏はチームスローガンを自らの筆でしたためた

なぜ”ゴン”中山氏はJ1磐田を退団しJ3沼津の監督を選んだのか?

 こう語った中山監督も沼津の現状を把握している。しかし、だからといって多くを注文していけば逆効果になりかねない。だからこそメンタル面からアプローチをかけていく中山監督は、現状で目指していくサッカーを「攻守一体」と掲げた。
「しかも攻守一体を極限まで高めていきたい。その意味で当然、ハードワークが必要になってくる。ただ動くだけのハードワークではなく、試合中にさまざまな情報を得るためにも、考えるハードワークもしてほしい。沼津が求める当たり前は、他のチームでは当たり前ではないかもしれない。それでも要求される当たり前を、すべての試合で表現してほしい」
 テレビなどでお馴染みの熱血キャラクターは、監督になったいまも健在だ。しかし、熱さが中山氏のすべてではない。ゴールを奪う際の理詰めのポジショニングを含めて、刻一刻と変わるピッチ上で静かに稼働させる冷静沈着さと表裏一体を成してきた。
 まずは指揮官が熱さを前面に押し出しながら、4シーズン連続で2桁順位にとどまっている沼津を内側から鼓舞していく。就任会見に続いて発表された今シーズンのチームスローガン。ワイシャツ姿になって自らが筆を取り、真っ白な紙に「結束 熱く闘え!」と記した中山監督は、ファン・サポーターへこう呼びかけることも忘れなかった。
「闘う魂を持ってスタジアムに来てください。そして、僕たちと一緒に戦いましょう。そして、笑顔で帰りましょう」
 高島社長は沼津を2025シーズンまでにJ2に、2033シーズンまでにはJ1にふさわしいクラブに変えていくビジョンを掲げている。ピッチ内の改革を託された中山監督は、その思考回路に「パッション」と「理論」を同居させ、状況に応じて絶妙のバランスで稼働させながら、55歳にして念願のデビューを果たす監督業のタクトを振るっていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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