球界大御所が指導者経験のない広島・新井貴浩監督の成功に太鼓判を押す理由とは…「今年のカープはV争いに加わってくる」
野手出身の監督に必要な参謀は、投手、バッテリー部門のスペシャリストだろう。新井監督は、その重要なヘッドコーチとして昨年まで阪神の1軍バッテリーコーチを務めていた藤井彰人氏を招いた。近鉄、楽天、阪神で17年プレー、楽天時代には最優秀バッテリー賞を受賞したこともある職人捕手で、新井監督とは阪神時代に4年間の親交があり、互いの野球観を共有している。投手コーチには、3年間1軍コーチをしていた横山竜士氏に加えて2軍から菊地原毅氏を昇格させ、さらに現役時代の“弟分”石原慶幸氏がバッテリーコーチに就任した。また2軍には実弟で昨年まで阪神1軍打撃コーチだった良太氏と、広島OBでヤクルトの走塁面を鍛えた福地寿樹氏を配置した。
「藤井のコーチとしての力量は知らないが、彼も苦労人。野手の監督に捕手のヘッドという組み合わせは悪くない」
組閣をそう評価した広岡氏は、広島浮上のポイントを3点指摘した。
1つ目は、機動力の強化だ。
「外国人も含めて打線は選手が揃っている。問題は機動力だ。足を絡めた仕掛けがあまりにも少ない。機動力は広島の伝統。そもそも走れる選手が少ないのだろうが、その育成も含めて取り組むべき」
昨年のチーム盗塁数26は、12球団ワーストどころか、球団ワースト記録。盗塁王の阪神の近本光司が1人で記録した30よりも少なかった。野間峻祥の7盗塁がチーム最多ではあまりにも寂しい。新井監督も、そこが課題だと理解していて「機動力は、重要な強化ポイント」と口にしている。
昨季チーム打率が12球団トップの.257だった打線はメンバーが揃っている。メジャーから移籍してきた秋山翔吾、打率.315を残した西川龍馬に菊池涼介と小園海斗の二遊間コンビ。今季から捕手専念の坂倉将吾に17本、74打点のマクブルーム、松山竜平、堂林翔太という顔ぶれが揃っていて、さらに新外国人としてメジャー通算54本塁打のマット・デビッドソンを三塁候補として獲得した。ここに機動力が加われば得点力はアップするだろう。
広岡氏が2つめのポイントにあげるのが、投手陣の整備だ。
「先発は森下、大瀬良、九里、床田、アンダーソンと5人いるが、衰えなのか不調なのか、30歳を超えた大瀬良、九里の2人に不安定さが見える。そこは起用法でカバーする必要がある。それと心配なのは中継ぎ陣。シーズンを通じてどう整備するか」
先発で2桁勝利に乗せたのは10勝8敗の森下暢仁の一人だけで、大瀬良大地は8勝9敗、九里亜蓮は6勝9敗と負けが先行した。チーム防御率3.54はリーグ5位。中継ぎ陣には現役ドラフトで巨人の左腕、戸根千明を獲得できたのは朗報だが、WBC代表に内定している守護神の栗林良吏へつなぐまでの勝利方程式が確立できず、シーズンを考えると人材不足。
先発のテコ入れも含め、ドラフトで即戦力として獲得した3位の益田武尚(東京ガス)、5位の河野佳(大阪ガス)、6位の左腕、長谷部銀次(トヨタ自動車)の社会人トリオへの期待が大きくなる。