侍JはWBCを「スモールベースボール」ではなくパワー打者を集めた「ビッグベースボール」で勝てるのか…里崎氏に見解を聞く
3月に開催される第5回WBCに出場する侍ジャパンのメンバー30人が26日、発表された。6日に発表されていた12人に加え、新たに18人が選ばれ、3大会ぶりに世界一を狙う最強メンバーが決まった。これまで最多の15人の投手陣は、先発、第2先発、中継ぎ、抑えと豪華な顔ぶれを揃えたが、ブルペン陣での左腕は松井裕樹(楽天)一人だけ。また野手では本塁打王経験者が4人も入り、パワー重視の傾向がみられ、センターを本職とする外野手も不在。栗山監督は、その狙いを否定したが、日本の特色でもあるスモールベースボールではなく、メジャーに真っ向勝負のビッグベースボールで世界一奪還を目指すことになりそうだ。
山川は国際試合への対応に苦しんだ過去
史上最強と呼んでいい。
メジャーリーガーは大谷、ダルビッシュ、鈴木、吉田、母親が日本人のヌートバーの5人。昨季のタイトルホルダーも、史上最年少3冠王の村上を筆頭に、パの2冠王、山川、投手5冠の山本、セーブ王の松井、奪三振王の戸郷と5人が揃い、自慢の投手陣は最多の15人を数えることになった。
栗山監督は、出場意欲を見せてくれたにもかかわらず落選となった選手へ「申し訳ない」と謝罪の意を伝えた上で「どういう形が一番勝ちやすいか。答えがあるわけではないが、僕とコーチとスタッフで一生懸命に考えたメンバー。基本的には投手を中心に我慢しながら、守り切って勝ち切っていく」と説明。目標を聞かれ「世界一。それだけ」と改めて決意表明をした。
では、このメンバーで勝てるのか。
第1回WBCの優勝メンバーで大会ベストナインにも選ばれ、北京五輪代表にもなっている元ロッテの“ミスターWBC”里崎智也氏は「選んだ選手の意図を全員説明できるメンバーが揃ったと思う。逆になぜこれで世界一になれないのかの理由が聞きたい。楽勝で世界一になれるメンバーでしょう」と評価した。
しかし、いくつかの疑問や不安点もある。
まずは野手の人選だ。追加発表した山川、岡本もしかり、大谷、村上、吉田、鈴木、ヌートバーに、好打に加えて本塁打も打てる山田、牧と、ズラリとパワーヒッターを並べた。重量打線のイメージが強い。日本の特色である機動力を生かしたスモールベースボールではなくメジャーにビッグベースボールで真っ向勝負する布陣に思えるのだ。
栗山監督は「各ポジションでしっかり守り、一番結果を残してチームの勝ちに貢献している選手を選び、そういう選手が多くなった。あえてそれ(ビッグベースボール)を狙っているということはない」と否定したが、予想されるスタメンの中で足を使えるのは源田一人だけ。足のスペシャリストの周東、ルーキーイヤーに盗塁王を獲得した中野を入れたので、ここ一番での機動力勝負はあるのかもしれないが、ビッグベースボールを意識したとしか思えない顔ぶれだ。
だが、里崎氏の発想は違った。
「大谷、源田、鈴木、ヌートバーの4人が走れる。盗塁技術のレベル差はあるだろうが、9人中4人に足があるのだから、決して塁が詰まって、一、三塁を作れないとか、二塁から1本でホームに生還できないなどの野球が動かないような重量打線ではない」
そして、こうも続けた。
「侍ジャパンの監督って何もしないのが一番。やることは誰を選ぶか、誰を代えるかだけ。選手がどれだけやるか。これだけのメンバーが揃ってベンチでやる野球はないんです」
もう日本の野球がビッグベースボールでメジャーに対抗できる時代になったというわけか。