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FAカップのリバプール戦でブライトンの三笘薫が後半アディショナルタイムに“神技”決勝ゴールを決める(写真・ロイター/アフロ)
FAカップのリバプール戦でブライトンの三笘薫が後半アディショナルタイムに“神技”決勝ゴールを決める(写真・ロイター/アフロ)

なぜプレミアで三笘薫は大ブレイクしているのか…ブライトンの「4-2-3-1」へのシステム変更とW杯で味わった悔しさ

 今月14日のリーグ戦に続いてリバプールから勝利を、しかも劇的な形であげたデ・ゼルビ監督は試合後に「ファンタスティック」を連発。三笘を称賛した。
「彼はもうひとつ上のレベルでプレーできるファンタスティックな選手だ」
 得点シーンだけではない。左サイドから縦へ突破し、あるいは中へカットインする変幻自在なドリブルで対面の右サイドバック、トレント・アレクサンダー=アーノルドを翻弄。24歳のイングランド代表DFは後半14分にベンチへ下げられている。
 これが『EUROSPORT』が言及した「リバプールに問題を与え続けた」であり、さらに「伝統的なウインガーとしてプレーする自由を与えられている」にあたる。もっとも、攻撃力だけが理由で三笘を生かすシステムへシフトしたわけではない。
 東京五輪直後の2021年8月に川崎からブライトンへ完全移籍で加入するも、就労ビザを取得できなかった関係でユニオン・サンジロワーズへ期限付き移籍して武者修行を積んだ昨シーズン。三笘の主戦場は[3-5-2]の左ウイングバックだった。
 相手ボール時には最終ラインに近いポジションを取り、守備面で高い強度も求められる未知のポジションへの挑戦。三笘はこんな言葉を残したことがある。
「自分に足りない部分を補えるリーグへ、成長するために行っている。ベルギーで試合に出るためにはウイングバックが最適だったけど、フィジカル的な部分がまだまだ足りない」
 プレミアリーグの舞台で、三笘は相手へのタックル回数などでも及第点の数字を残している。ベルギーの地で試行錯誤を繰り返しながらも、リーグ戦で27試合に出場して7ゴールをマーク。1シーズンを駆け抜けた過程で、身長178cm体重73kgと一見すると華奢に映る体に搭載された“強さ”も、デ・ゼルビ監督の信頼を勝ち取る大きな要因になった。

 いま現在に至る継続性という点では大学時代も見逃せない。
 川崎の下部組織で心技体を磨いた三笘は、高校生年代のU-18からトップチームへの昇格を打診されながら辞退し、2016年4月に筑波大へ進学した。その理由を「中長期的なビジョンで、自分自身やサッカーを見つめたかった」と語ったことがある。
 目標に掲げた日本代表入りや海外移籍から逆算したときに自分には何が必要なのか。弾き出された答えが唯一無二の武器を持つことであり、大学の4年間をかけて求め続けたのがドリブルだった。現在はヴィッセル神戸でプレーする同学年のDF山川哲史(25)を相手に、全体練習以外の時間を利用して毎日のように1対1を繰り返した。
 時には頭にGoProカメラを装着。相手を抜くドリブルの視線を徹底的に分析した成果は、タイトルに「サッカーの1対1の場面における攻撃側の情報処理に関する研究」と銘打たれた卒業論文にまとめられた。基本的に右足の前、アウトサイド寄りにボールを置き、背筋をピンと伸ばして視野を確保しながら緩急を駆使する独自のドリブルが完成した。

 

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