なぜプレミアで三笘薫は大ブレイクしているのか…ブライトンの「4-2-3-1」へのシステム変更とW杯で味わった悔しさ
大学入学までのチャンスメーカーから、ドリブル突破に得点力を兼ね備えたウインガーへ。鮮やかな変貌を遂げた三笘は川崎で、ベルギーで、イングランドで、そして五輪代表やA代表で日の丸を背負っても、逆算の出発点となる目標を常に高く掲げてきた。
初めて臨んだW杯で味わった悔しさも、目線の高さをさらに押し上げた。PK戦で2番手のキッカーを志願するも相手キーパーに止められ、ベスト16で敗退したクロアチア代表との決勝トーナメント1回戦後に、三笘は涙とともに決意を新たにしている。
「代表に求められるのは、もっと攻撃的なサッカーだと感じている。そのためには選手個々のレベルをアップさせていくしかない。一人ひとりがもっと脅威になれば、そこから崩していけるのがサッカー。1対1をもっと強くしていかなければいけない」
言葉通りにW杯後の三笘は異彩を放っている。
リーグ戦が再開された昨年末のサウサンプトン戦から、公式戦で7試合続けて先発。リーグ戦で積み重ねた3ゴールのなかには、これまでの三笘には見られなかったスーパーゴールも含まれる。左サイドからカットインしながら右足でカーブの軌道を描かせ、ゴール右隅へ着弾させた21日のレスター・シティ戦で決めた一撃もまた世界を震撼させた。
リバプール戦での決勝弾を振り返れば、トラップからキックフェイント、空中ダブルタッチからのシュートのすべてを右足で完結させた。そのうちトラップとシュートはアウトサイドを駆使。ある意味では大学時代から積み重ねてきた努力の延長線上にある。
「ドリブルという武器で、どんな場所へ行っても自信を持って相手に立ち向かえました。そういった武器を持つことが最後、自分を信じる力に繋がります」
日本プロサッカー選手会(JPFA)が新設した、所属するプロ選手の互選で選出される「JPFAアワード」で初代MVPに選出された三笘は、ビデオメッセージのなかで自身の経験にもとづいたアドバイスを子どもたちへ伝授。さらにこんな言葉を紡いでいる。
「現在の自分のプレースタイルや特徴、将来なりたい姿、理想をイメージしながら、日々どうやって練習するかを考えていくことが大事になります」
現在進行形で続く自己を高める努力。そこへ川崎やベルギーで積んだ濃密な経験と、三笘の能力に全幅の信頼を置くデ・ゼルビ監督の存在が加わった。システム変更に伴い、三笘のプレーを理解し、お互いにサポートし合える左サイドバック、エクアドル代表のペルビス・エストゥピニャン(25)と縦関係で共存できるようになった点も大きい。
さまざまな要因が絡み合った大ブレークは、もちろんピークを迎えていない。サッカーの母国を、そして世界を驚かせるたびに、2025年6月末までの4年契約で川崎から加入した際の移籍金250万ポンド(約4億円)も数倍、十数倍へはね上がっていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)