困惑の保護者説明会…経営破綻でJFL退会通告を受けた「FC神楽しまね」が育成組織の活動停止決定を報告も理由は示さず
運営法人側は昨年6月に、コーチングスタッフや選手たちに対して給与の支払いが遅れると通達している。最終的に6月分は2段階で満額が支払われたものの、7月分は一部だけで、8月分以降は無給状態のままチームは12位で昨シーズンを戦い終えた。
加えて、毎年7月末を期限とするJFL年会費1000万円も未納が続いていた。JFL側は3月開幕の新シーズンへ参加する条件として、総額で約5300万円に膨らんだ未払い金の精算を課した。しかし、期日の1月20日までにいっさい実行されなかった。
JFLの加藤桂三理事長は、神楽しまねに厳しく言及している。
「運営法人には現時点で資金がない上、一時的に支払うための借り入れもできなかったと思われる。今年の資金繰りに関する考え方は示されたが、不安定要素はまだまだあった。何よりも未払い金が精算されて初めて新シーズンのスタートラインにつける」
この状況下で設立される「松江シティフットボールクラブ」に対して、疑念を抱いてしまうのは保護者の心理として自然の流れとなる。新規スポンサーがついたのならば、保護者説明会で明言すればいい。子どもたちが最後までサッカーを続けられるのかどうか。何もわからず、結論だけを急がれる状況では不安と困惑だけが広がってしまう。
入会を選択しなかった子どもたちに対しても、練習ができる環境を考えていくと運営法人側は説明したという。しかし、環境を用意し続けるための資金を捻出できるのかどうか。未来ある子どもたちを一度は預かった、神楽しまねの責任が問われてくる。
トップチームの今後も未定のままだ。
昨シーズンを戦った陣容から、クラブOBでもある実信憲明監督(現J3福島ユナイテッドコーチ)と加藤秀典コーチ(現JFLヴィアティン三重アカデミースタッフ)が退団。指揮官が不在となった首脳陣は、現時点でコーチ一人だけとなっている。
報酬を得られない状況では、選手もプレーを続けられない。キャプテンのMF垣根拓也(現関東サッカーリーグ1部VONDS市原FC)をはじめ、年末から年始にかけて退団が相次いだ結果、27人を数えた選手は3分の1の9人に激減した。JFLに代わる戦う舞台を新たに探していく前に、トップチームそのものが存続の危機に直面したままだ。
一夜明けた1日に開催されるクラブ説明会では、トップチームの今後に関しても新たに言及されるのかどうか。クラブへの「緊急支援のお願い」が真っ先に視界に飛び込んでくる神楽しまねの公式H上では、31日の時点で育成組織の活動停止は報告されていない。
(文責・藤江直人/スポーツライター)