香川真司のセレッソ復帰は成功するのか?
ピッチには立たなかったものの、香川は1月22日のヘント戦ではベンチ入りを果たした。プレーが可能になった証とも言えるが、完成度が高まっているセレッソ攻撃陣に、食い込んでいけるだけのコンディションを取り戻せているかどうかは現時点で未知数だ。
もっとも、香川自身もセレッソへの復帰、即、ポジションが用意されるとは考えていないはずだ。スカウト時代に自身を見出し、プロの世界へ導いてくれた恩師、小菊監督に特別扱いしてほしいとも思っていない。指揮官も電撃的に決まった香川の加入を望外の喜びとして受け止めながらも、香川を中心とするチームへと作り直す考えは毛頭ない。
すべてに優先されるのは競争。この日はコメントを発表しなかった香川が抱く思いは、シントトロイデンに加入した昨年1月に残した言葉と一致している。
「僕自身がそうであったように、若い選手たちは常に野心を持ちながらチャレンジしている。そういう選手たちと一緒に切磋琢磨していくなかで、彼らが得られるものがたくさんあるんじゃないかと思う。もちろん自分の経験から伝えられることもたくさんあるし、それらをみんなでシェアして、一体感を持ってこのチームを上に行かせたい」
ここで言及した「このチーム」が、シントトロイデンからセレッソへと変わる。ヨーロッパのオフには帰国し、練習にも参加してきた古巣は現時点でゲームをコントロールし、アタッキングサードでチームにクオリティーを与えられる選手を必要としている。
相手守備陣を混乱に陥れた一瞬のスピードは、さすがに落ちたと言わざるをえない。それでも香川に搭載された、ヨーロッパを席巻したテクニックはまだ錆びついていない。途中出場で最後のピースを埋める役割を求められるとすれば、やはり香川が適任だろう。
今後は5日に行われる加入記者会見で復帰に至った思いの丈を語り、その後に18日のアルビレックス新潟との開幕戦(ヨドコウ桜スタジアム)へ向けて最終調整に入るセレッソに合流する。天国だけでなく地獄も味わってきた、濃密すぎるほどの経験をすべて開放しながら、3月には34歳になる香川が文字通りゼロからのチャレンジをスタートさせる。
(文責・藤江直人/スポーツライター)