「精神的な疲れ」と「不安」…15歳ドルーリー朱瑛里を出場辞退にまで追い詰めた”悪者”の正体…日本陸上界の宝を異常なマスコミ攻勢や一部ファンの“暴走”からどう守ればいいのか
「YouTubeやTikTokには、たくさん私の動画が上がっています。応援の思いも込めて動画をアップしてくださっているのだと思います。気持ちはとても嬉しいのですが、私の肖像権を無視して動画等をインターネットに上げる行為はやめていただきたいです。また収益目的で名前と画像等使用することもやめていただきたいです。今後もっと無断で撮影される事が増えていくのではないかと考えると、とても不安です」と綴った。
ドルーリーが指摘するようにYoutubeやTikTokには、レース中の動画などが次々とアップされている。熱心に応援するファンのYoutubeもあるが、PVを稼ぐ収益目的のために無断アップされたものも少なくない。完全な無法地帯と化している。
断りもなしにスマホを向けられる強迫観念については、プロのアスリートでさえ嫌悪感を抱く人が少なくない。まして、それが多感な15歳の中学生となれば、なおさらだろう。
陸上のハードル競技で五輪に3大会連続出場したスポーツコメンテイターの為末大氏(44、R.project)は、ツイッターに「これは日本のスポーツ界は女子アスリートへの盗撮、無断の撮影問題にも関係すると思います。マスメディアよりも、個人で撮影している人間をどう抑止するかが重要です」と投稿。ファンの無断撮影に関する問題点を指摘した。
現在は、運営側が厳しく規制するようになっているが、今なお女子のビーチバレーや体操競技などにおける盗撮行為は後を絶たない。駅伝やクロカンは、観戦が制限されていない場所が多く、沿道からいくらでも動画撮影できる環境にある。個人撮影をどう抑止するかの問題は、法律で取り締まる手段は限られていて沿道やゴール地点での主催者側の警備の強化や“パトロール”で注意を喚起するしかない。違法にアップロードされた動画を次々と肖像権の侵害で訴えて“抑止力”とする手段もあるが、経済的な負担と労力を考えると、それをアスリートに負わせるのも酷だ。
ドルーリーは、これまで「インターハイで勝ちたい」と次なる目標を口にしており、この日の声明文でも「高校生になっても、陸上は続けていきます。もっと記録を伸ばせるように、努力しようと思っています」と明かし、「私は可能な限り普通の生活をしながら、陸上を続けていくことを希望しています。そのため、報道の方々、応援してくれる皆さまには、もしどこかで見つけたとしても、動画を撮ったり、声かけは控えて欲しいです。そっと見守っていただけるとありがたいです」と訴えかけた。
日本陸上界の宝が陸上競技を断念するまでに至らなかったことはまだ救いだが、今回の訴えは、アマチュアアスリートのプライバシーや人権をどう守り、練習環境をどう整えればいいのか、という問題に関して一石を投じた。