阪神OBの赤星憲広氏は臨時コーチとして何を教えたのか…アレ狙う岡田監督発案の“走塁革命”をサポート
阪神OBで盗塁王を5度獲得した赤星憲広氏(46)が4日、阪神の沖縄宜野座キャンプで臨時コーチを務めた。自らの体験をもとに落合中日式のオーバーランの大切さを説き、近本光司(28)、中野拓夢(26)、島田海吏(26)、植田海(26)らの俊足選手には盗塁の成功率を高め、怪我防止にもなる「足からの帰塁」の極意を教え、内野安打を増やし併殺打を減らすための「走り打ち」の必要性を意識させた。岡田彰布監督(65)は、今季から選手が走りたいときに走る「グリーンライト」のサインを撤廃。ベンチからの「ディスボール(このボールで走れ)」で盗塁をさせる考えだが、赤星氏は「盗塁数は減るが、監督に背中を押してもらうつもりで走ればいい」とのアドバイスを送った。
落合中日式のオーバーランと「走り打ち」内野安打
通算381盗塁を誇るレッドスターの走塁教室は、オーバーランの意識付けから始まった。午前中に行われた走塁練習。赤星氏が説いたのは、オーバーランの重要さ。一塁ベースを回った際、ほぼ全員がセンター前ヒットを想定して一塁ベースを回った際に同じ場所で、ストップしていた。
「走塁練習は本数が少ないんだから惰性で走るんじゃなく、野手が守っているイメージでどういう打球を打ってどう走っているのかを意識してやれと。走塁は実戦でなければうまくならないジャンル。それだけに実戦に入る前に練習から意識しないと」
赤星氏は現役時代にセンターを守っていて落合博満監督が率いる中日打線のオーバーランの徹底に脅威を覚えたという。
「谷繁さんを除いて1番から7番までみんなオーバーランが大きくて二塁を狙っていた。それが凄く嫌だった。盗塁数はリーグトップで、阪神は走れるチームに変わっているが、なんでいかないの?と気になる場面があった。走る能力があるんだから他球団に嫌がれる走塁をしたらと。大山、佐藤もスピードがある。阪神もみんなができると思う」
2004年に優勝した中日は、井端弘和氏、荒木雅博氏のアライバコンビだけでなく、現監督の3番の立浪和義、4番の福留孝介氏ら、全員のオーバーランが大きかった。
続けて近本、中野、島田、植田、小幡の左打者5人だけを残してやった特別授業が「内野安打」のススメだった。“ひょい”とティー打撃のように近くからボールを投げてもらい、実際に、それを打ってからの一塁までの走塁タイムを計測。ライトへ打球を引っ張った通常の走塁パターンと、逆方向へ流しての「走り打ち」の時間差を明確に示したのだ。
赤星氏によると0.3から0.4秒の差があったという。
実は、このタイム計測は岡田監督の発案だった。
今季の近本の内野安打は20本、中野は17本に終わっていた。赤星氏が現役時代にシーズン44本の内野安打を数えたことに比べるとあまりにも少ない。理由は、近本も中野も振り切るタイプで、内野安打狙いの「走り打ち」がほとんどないことにある。
「2人は、しっかりと振って走るタイプで、それが悪いわけじゃない。ただ(カウントを)追い込まれたとき、苦しいときに、三遊間に流した(走り打ち)のタイム差を知っていればいいのでは、と。近本、中野はもうワンランク上にいってもらわないといけない選手。その技術向上のための岡田監督の発案だった」と赤星氏。
実際、そのタイム差を示すと、近本と中野は、「こんなに違うのか」と驚いていたという。それを知っているだけで、試合状況や打席でのカウントによって「走り打ち」へ切り替えるという決断ができる。
たとえば二死三塁から内野安打で1点を奪えば大きいし、1点を追うイニングの先頭打者でもいい。岡田監督も「あの足があればもっと率も上がる。(カウントを)追い込まれて、左対左で難しいボール来ても、走り打ちでセーフになれば、チームにとってプラス。自分も打率が上がる。勝負どころでの内野安打は大事よ」と言う。
また併殺打も中野は昨季9個で近本も7個あった。赤星氏は、2003年こそ星野仙一監督に「ゲッツーOK」と伝えられ、15個も併殺打があったが、岡田監督が就任した2004年からは、引退するまで6年連続で3個以内に抑えた。「走り打ち」を意識することは併殺打を減らす効果にもつながる。