阪神OBの赤星憲広氏は臨時コーチとして何を教えたのか…アレ狙う岡田監督発案の“走塁革命”をサポート
赤星氏は、今回、臨時コーチの打診を受けて、それぞれの選手の動画を見て、その特長や課題をチェックしてきた。WBC代表に選ばれた中野には、ここ一番の場面では、力んでスタートの時点で上半身が起き上がって成功確率が落ちるという課題を見つけたという。
「知っていた?と本人に聞くと『そうなんです』とわかっていた。呼吸法など力まないようにする方法はある。WBCではせっぱつまった場面でいく可能性もある。どれだけそこを意識できるか。それができればWBCでもやれる」
また近本は、3度、盗塁王を獲得しているが、最多が36個で昨季も30個だった。中野も最多が30個。赤星氏は、最多が64個で3年連続で60個以上をマークしており、数字は倍ほど違う。赤星氏でなければ、盗塁数を増やす授業はできないが、「増やすと思わなくていい」と、意外な持論を展開した。
「当時の走れる選手は僕一人。だから60個走ったが、今は、近本、中野の2人を足すと60個になる。50個を目指すと思わなくていい。実際60個も走ると143試合戦うのがしんどい。40、50個を目指すと1年間持たない。近本、中野に求められるものは盗塁だけじゃない。安定して30個はして欲しいし、ホームに還ること、得点を増やすための盗塁だからね」
この日は、「JFK」の一角を担った駐米スカウトであるジェフ・ウイリアムズも来日して2005年の優勝メンバーがグランドに揃った。
赤星氏は「感慨深かった」という。
「2005年以来優勝ができていないが、優勝のできる戦力だと思う。チャンスも数多くあったが、なかなか勝てなかった。星野さんから言われたのが『優勝したい』じゃ優勝はできない、『優勝するんや』でないとできないということ。アレをするんや、という強い気持ちで行ってほしい。監督もアレだと言っている。選手もその気持ちで臨んでくれる。あと2日できることをやりたい」
赤星氏は、そう力強いエールを送った。
岡田監督は、当初、赤星氏のコーチ入閣を検討していた。球団と擦り合わせをする中で、今回は見送りとなったが、その指導能力を高く評価していた。今回もキャンプを盛り上げるパフォーマンスとして臨時コーチ打診したわけではない。指導内容も、丸投げするのではなく、自らが考えている“アレ構想”を肉づけするために、目的を持って“走塁レジェンド”の意見を求め、そのスキルを説得力を持って機動力を期待するスペシャリストの5人に伝えてもらった。岡田&赤星氏の走塁革命がアレ達成にどんな効果をもたらすのか。赤星氏は今日5日は、具志川の2軍キャンプを指導する予定だ。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)