なぜW杯代表落ちのセルティック古橋亨梧が欧州での歴代日本人最多得点記録を更新したのか?
スコットランド・プレミアシップのセルティックに所属するFW古橋亨梧(28)が歴史を塗り替えた。敵地で5日に行われたセントジョンストンとの第25節に先発した古橋は、前半22分に今シーズン19ゴール目をゲット。FW浅野拓磨(28、ボーフム)がパルチザン・ベオグラード(セルビア)時代の2020-21シーズンにマークした、ヨーロッパ主要リーグにおける日本人最多得点記録を更新した。チームも4-1で快勝して連覇へ向けて首位を独走。W杯代表落ちの悔しさを味わった古橋が、得点王争いトップに立っている。
体を反転させての一撃
古橋の勢いが止まらない。
今シーズン19ゴール目を決め、ヨーロッパ主要リーグにおける日本人最多得点記録を更新した。最多記録に並んだリヴィングストンとの前節からわずか4日。敵地でいとも簡単に、なおかつ豪快な一撃を叩き込み、浅野を抜いて歴代単独トップに躍り出たのである。
記念すべき瞬間は、セルティックが1-0とリードしていた前半22分に訪れた。
自陣の中盤から発動させたカウンター。右サイドに開いたFWジョタへロングボールが配球された瞬間に、センターフォワードで先発していた古橋も一気に前方へ加速した。
ボールを収めたジョタがテクニックを駆使しながら、マーカーと1対1の攻防を繰り広げる。その間に古橋はセントジョンストンのセンターバック、アレクサンダー・ミッチェルの背後を取り、次の瞬間には前方へ姿を現す動きを繰り返し、ポジション争いで主導権を握り続けた。
そして、ジョタが右足で送ったグラウンダーのクロスが、もう一人のセンターバック、アンドリュー・コンシダインの左足をかすめ、ゴールと反対方向へコースを変えた直後だった。まるで事態を予測していたかのように、再びミッチェルの前方へ姿を現した古橋が右足でボールを収める。さらに間髪を入れずに体を反転させて右足を振り抜き、強烈な一撃を突き刺した。
目の前で古橋に今シーズン19ゴール目を決められた21歳のミッチェルは、ぼう然と立ち尽くすだけだった。その胸中にはどのような思いを抱いていたのだろうか。
スコットランドメディアの『THE SCOTSMAN』は1月中旬に、実際に古橋とマッチアップしたばかりのセンターバックの悲鳴にも近い声を紹介している。キルマーノックのベテラン、32歳のアッシュ・テイラーは古橋との1対1を「猫とネズミ」にたとえている。
「彼の動きはとても鋭く、常に隙を突こうとしている。彼は背後から僕らを引きつけ、次の瞬間、一気にスペースへ飛び込もうとする。まるで猫がネズミに遊ばれているかのような感覚に襲われる。こちらが一瞬でもスイッチを切ってしまえば、たちまちやられてしまう」
どちらが猫で、どちらがネズミなのかは言うまでもないだろう。