中日キャンプ“第1号“を放ったメジャーで逸話作った新外国人アキーノは立浪竜の救世主となるのか…立浪監督が「練習でも打った(意味が)大きい」と語った理由とは?
日本野球に適応し、バットコンタクトの確率を上げるために、さっそく新任の和田一浩打撃コーチが、その打撃にメスを入れたのである。
簡単にいえば、「ボールとの距離が近くなる突っ込み癖」をなくすという打撃改造で、アキーノは、投手に正面を向くほどの極端なオープンスタンスから左足を踏み込んでいく独特のフォームをやめて、スパイク一個分ほどだけ開いた、ほぼスクエアなスタンスから左足をゆったりと上げ右足に体重を残してボールを待つ形でタイミングを取っていた。まだテイクバック時にボールを待つ“間”が足りないように感じたが、「日本人投手と、どんどん対戦していろんなものを感じて欲しい」と、キャンプ5日目のシート打撃から参加させた立浪監督は、その打撃改造中に出た一発に意義を感じていた。
「本来であれば、ワンクール目は様子を見ながらということになるのだろうが、早い段階から、もう少し(体が前へ動かずにボールとの)距離を取れればと(和田)バッティングコーチと話しながら(打撃改造に取り組んでいる)。本人も、それをわかっていて一生懸命練習に取り組んでいる。まだまだ(これから)よくなる。この1か月が大事な期間となる中で、結果が出た。必ずしも、すべてがいいわけじゃないが、自分のやっていること(打撃改造)が間違っていないとわかってもらえれば、練習のシート打撃の結果といえど(意味は)大きい」
プライド高きメジャーリーガーは、こういう打撃修正を簡単には受け入れないものだし、チーム側からもアプローチもしにくい“聖域”。だが、昨年もビシエドの打撃に手を入れた立浪監督にタブーなど存在しない。アキーノを焼き肉に招待するなどして、十分にコミュニケーションを取り、本人が伸び悩みを感じていたことも手伝ってか、異例ともいえるキャンプ序盤からの日本流打撃改造に取り組むことになったのである。
アキーノの第1打席は、鈴木博志のストレートにやや詰まりながらセンター前ヒット。外角の変化球にもバットは止まっていた。ホームランに続く第3打席はライトフライに倒れたが、藤嶋健人と対戦した第4打席は冷静に四球を選んだ。早くも5日目にして打撃改造の効果が見える。
「日本人投手のコントロールはいい。なおさら打てる球をミスしないことが重要になる。今日のスライダ―は打てる球というボールではなかったがね」
同僚に気を使いながらもアキーノは、ボール球に手を出さずに三振を減らすことに意識が向かっているようだ。
またアキーノは送球で最速164キロをマークした強肩の持ち主で、レーザービームの捕殺が、メジャーで話題になったこともある。守りの野球が基本線にある中日において、ライトで起用されるアキーノの守備力もプラスだろう。シート打撃では守りにつかなかったが、外野でのノックの動きを見る限り1m95、108キロの巨漢でも運動能力は高そうである。
「今の調整具合のパーセンテージ?それは出しようがないが、日に日に上げていく」とアキーノ。
あのパワーと結果が結びつけば、相手バッテリーにプレッシャーを与えることは間違いない。前後の打者にも好影響を与えるだろう。層の厚い投手陣を擁するだけに、アキーノが30本でも打てば、Aクラス入りまであったゲーム差「3」が縮まる可能性はある。日本野球へ対応するためのアキーノの打撃改造の成否が中日の浮沈のカギを握る。
立浪監督は11日のサムスンとの練習試合でアキーノを実戦デビューさせるプランを練っている。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)