井岡一翔はWBO王座を返上してドロー判定に終わっていたWBA王者のフランコ(左)との再戦を選択(写真・山口裕朗)
井岡一翔はWBO王座を返上してドロー判定に終わっていたWBA王者のフランコ(左)との再戦を選択(写真・山口裕朗)

井岡一翔がWBO世界王座を返上しWBA王者フランコと再戦へ

井岡は、その試合後に「フランコと再戦して決着をつけたいという気持ちもあるが、どっちと戦いたいか?と聞かれれば、エストラーダ」という思いを吐露していた。井岡自身は「自分の感覚では勝っているかなと。確信があった。オレが勝っている」との確かな手応えがあった。クリーンヒットでは上回っているとの確信があったが、ドロー判定という現実を突きつけられ、疑念の声を晴らす意味でもフランコとの完全決着へと気持ちが傾いた。
 関係者によると、井岡の気持ちの中での優先順位は「エストラーダ、フランコ、中谷」だった。悲願のエストラーダ戦には「やっとここまでこぎつけた」という思いがあり、フランコ戦には「プライドをかけた完全決着」というモチベーションがある。中谷戦に関しては「チャンピオンの義務」はあるものの、井岡からすれば、メリットのない戦いでモチベーションを作りにくかったのも事実。「ボクシング人生の選択肢」として、井岡は無冠となることを承知で、退路を断って挑戦者としてフランコとの再戦に挑む道を選んだのである。
「負けたら終わり、ボクシング人生は残り少ない」と公言してきた井岡には「何を言われようと自分のやりたい戦いをしたい」との信念がある。
 エストラーダ自身は「井岡かフランコか。オファーのあった方と戦う。井岡が無冠でも戦う」とメディアに語ったが、実はベルトを持った統一戦であることも条件のひとつとなっており、井岡は、エストラーダ戦を実現するには、絶対にフランコに勝たねばならなくなった。
 WBAがダイレクトリマッチを認めるかどうかの問題はあるが、大晦日の試合はオプションの関係ない統一戦であり、井岡がWBO王座を返上して挑戦者として対戦するのであれば、指名挑戦者扱いとなり、障害にはならないとの見方がある。複数の関係者によると、6、7月に日本開催の方向でフランコとの再戦交渉が進んでいるという。
 一方で、大晦日の井岡ーフランコ戦をリングサイドで視察し「やるからには勝つという気持ちで仕上げていく。井岡さんは安定してるボクサー。フランコが手を出し続けたような集中力のいる試合になる。いいイメージはできた」と語っていた“ネクストモンスター”中谷にとっては、ショックな展開となったが、王座決定戦への優先出場資格が与えられる。
 対戦候補は、井岡が再戦を目論むフランコとWBAのベルトを巡って3度対戦した2位のモロニ―と、井岡への挑戦に失敗したものの再起して4階級制覇を狙っている3位の田中の2人。どちらになっても好カード。中谷の2階級制覇をかけた戦いにも注目が集まる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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