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井上尚弥のいとこの浩樹が引退を撤回して2年7か月に復帰したリングでTKO勝利(写真・山口裕朗)
井上尚弥のいとこの浩樹が引退を撤回して2年7か月に復帰したリングでTKO勝利(写真・山口裕朗)

なぜ井上浩樹は2年7か月ぶりの現役復帰戦をTKO勝利で飾ることができたのか…いとこの尚弥からの心に突き刺さった言葉とは?

「負けたことで練習への姿勢もすべてが変わりました」
 真吾トレーナーを「ボクシングを舐めている」と度々激怒させていた“天然”の浩樹の練習への取り組み方が激変。加えて2年7か月のブランクは、腰、肩、左拳と、満身創痍だった浩樹の肉体を回復させるのに役立った。
「すべてのことに調子がよくて、逆にこんなに調子よくて大丈夫かと怖かった」というほどのコンディションでリングに上がれた。
 大橋会長によると、これまでは、度重なる故障で、満足に調整ができず「試合の2、3日前に練習にきて勝っていた」という。
「天才というのは、こういうボクサー。井上家で一番才能があるのは浩樹なんだよね。練習したら凄い。今回は、これまでで一番やって調子が良くて怖いくらいだった。それが試合で出た。これからが楽しみになるね」
30歳になった。スーパーライト級、もうひとつ上のウェルター級での世界挑戦は層が厚く簡単な階級ではない。世界のリング事情を重々承知した上で浩樹は、「やるからには世界(王座)。そこを目指さないとダメ」と、世界タイトル奪取を目標に掲げる
 これまで井上ファミリーの1人として“モンスター”と比較されてきたが、「今はもう比較されるような立場にいない。比較されるくらいのところには戻らないと」と自虐的に笑う。
 そして世界タイトルに辿り着く前に果たすべき狙いがある。
「自分的には借りというか、恩というか、それがある相手がいる。いったん(借りや恩を)返させてもらう道もありかな」
 永田へのリベンジである。永田は、浩樹から獲得した日本スーパーライト級のタイトルを2度目の防衛戦で、鈴木雅弘(角海老宝石)に10回TKOで敗れて失った。だが、再起して昨年12月には近藤明広(一力)を判定で下してOPBF東洋太平洋同級王座を獲得している。
 大橋会長も、「今後の展開にはいろんなパターンがある。是非チャンスを作りたい」と浩樹の“第二章“をバックアップしていく姿勢を示した。
「引退前より確実に強くなっている」
 第2のボクシング人生の再スタートを最高の形で切った井上家の“最終兵器“。敗北を知ったボクサーは強くなる。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社

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