【独占激白】中日の立浪監督が語る「根尾昂の起用法」と「高橋宏斗の“山本由伸フォームコピー騒動”の顛末」
――Z世代についての話を続けてもうひとつ。昨年のシーズン途中に投手へ転向させる異例の決断を行い、今季は先発として取り組ませることを決めて2軍キャンプスタートとなっている根尾についても聞かせてください。まずなぜ先発へ転向させたのですか?
「後ろの投手はたくさんいます。去年は、まず投手を経験させることが一番の目的で、実際は敗戦処理が多かったですが、彼の能力から考えると、もっと大きく育ってもらいたいんです」
根尾は昨年、主に中継ぎ登板を中心に25試合、29イニングに投げ、1ホールド、防御率3.41の成績を残した。オフには米国シアトルにあるデータ解析にもとづいてスキルアップを図る“メジャー版虎の穴”「ドライブライン」で変化球の質を磨き、鳥取にある初動負荷トレーニングの「ワールドウィング」に通い、本格的な投手転向に向けての取り組みを行ってきた。
だが、先発転向は順調とは言えず、今キャンプでは、初の打撃投手を務めた際にストライクが入らず、ブルペンでのピッチングを7日間封印するなどの試行錯誤が続いている。
「正直、秋のキャンプから壁にぶつかっています。これを打破していかないといけない。今はガムシャラにやってもらいたいんです。人気がある選手で、根尾自身も“いい格好しい”なので焦っているんですよね。そこで苦労している。今はガムシャラにやればいいんです。焦らなくてもいい。本人の気持ちは、わからんでもありませんが、今年ドラフトで入ったくらいの気持ちでやってくれればいいんですよ。去年の途中から投手に変わったばかりじゃないですか。すぐに結果を出さなくてもいい。長い目で見ています」
ーー去年の結果から見ると中継ぎでの1軍チャンスはあると思うのですが、先発での1軍チャンスは、どういう条件を満たしたときにつかめますか?
「頭がいい子なんで、先発として自分の置かれているポジションはわかっていると思うんです。大野、柳から始まって自分がチームの中で先発の何番目にいるかはわかっているはずなんです。現時点ではもちろん厳しい。その順番が上がるように、まずはファームでローテーションに入って投げて力を付けることです」
今季の中日の先発候補は大野雄大、柳裕也、小笠原慎之介、高橋宏、松葉貴大、そしてトレードで移籍してきた涌井秀章と充実した6人が揃っている。続けて勝野昌慶、福谷浩司、梅津晃大、鈴木博志、上田洸太朗、岡野祐一郎、そしてドラフト1位の仲地礼亜らがチャンスを伺っており、現在の序列で言えば、根尾はとてもローテーション候補に届かない。立浪監督は特別扱いするつもりはなく、ファームで実力をつけ、結果で、その序列を上げて自ら先発チャンスをつかみとるしかないのだ。
ただ立浪監督は「焦らずにガムシャラにやれ」と忠告した。
今季中に根尾に先発の戦力になってもらわねば困るというチーム事情ではなく、根尾自身も一気にその順列を上げる必要もない。今年でプロ5年目。立浪監督の言葉通り、大卒ルーキーのつもりでゼロからのスタートを切ればいい話で、監督自身が「長い目で見る」と断言している以上、結果が出ないからといって1、2年で見切りをつけられることはないだろう。甲子園の優勝投手も、プロでは、3年間も投手としてのトレーニングを行っていないブランクがあり、本格転向してまだ1年も経過していないのである。150キロをマークする速球と、天性の制球力に加え、クレバーさを兼ね備えたマウンド度胸が根尾の持ち味。指揮官が、根尾の育成方針を明確にした以上、ファンもメディアも根尾の成長を長い目で見守る必要があるのかもしれない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)