今日開幕!30周年のJリーグは“2強時代”から大混戦の”戦国時代”へ
むしろ楽しみな存在として、11位だった鳥栖があげられる。
債務超過に陥っていた財政事情もあって、昨シーズンは主力のほとんどが他チームへ移る状況で開幕を迎えた。降格候補にもあげられたなかで、初めてJ1の指揮を執る川井健太監督のもと、ふた桁順位とはいえ一度も残留争いに巻き込まれることなくシーズンを終えた。
迎えた今シーズン。前述した宮代や垣田のレンタルバックは、ある意味で致し方ない部分がある。ただ、主力の流出をMF小泉慶(FC東京)とDFジエゴ(柏)だけにとどめたのは、川井監督が掲げる攻撃的なスタイルに、多くの選手が共鳴しているからだろう。
問題は2人で14ゴールをあげた、宮代と垣田の穴をどのようにして埋めるか。昨シーズンのJ3で11ゴールをあげた19歳のFW横山歩夢(松本山雅FC)、J2で11ゴールをあげたFW富樫敬真(ベガルタ仙台)ら新戦力が台頭すれば、上位を食う存在になる可能性が大きい。
もっとも鳥栖の場合、横山やヨーロッパの移籍市場で取り上げられた19歳のDF中野伸哉が、U-20アジアカップとFIFA・U-20W杯を控える日本代表の活動で不在になる可能性が高い。実際、2人は開幕節を終えた直後に、U-20アジアカップへ臨むためにチームを離脱する。有望な若手を数多く擁する、育成型クラブの宿命とも向き合っていくシーズンになる。
それでも川井監督は、今シーズンのストロングポイントをこう語る。
「選手層の厚さですね。誰が出ても、チーム力が落ちないと思っています」
今シーズンからはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)が秋春制に移行し、マリノスと川崎はJ1戦線が佳境を迎える9月以降に、ACLのグループステージを並行して戦う。ACLの決勝に進出している浦和レッズが敗れれば、広島も来シーズンのACLプレーオフの出場権を得る。
過密スケジュールによる故障など不測の事態に直面したときには、シーズン中に迅速かつ的確な補強に動けるかどうかという点でクラブ力も問われてくる。その場合は過去にもシーズン中の補強を成功させてきたマリノスに、一日の長があるかもしれない。
2強時代を形成してきたマリノスと川崎の背中を、広島を筆頭とするライバル勢が射程距離にとらえつつある状況で迎える今シーズン。優勝候補筆頭が不在の戦国リーグは前売りチケットがわずか5分で売り切れた、川崎とマリノスの黄金カードで幕を開ける。
(文責・藤江直人/スポーツライター)