30周年のJ開幕戦で横浜F・マリノスが白星発進…ヒーローとなった25歳“新守護神”オビ・パウエル・オビンナって誰だ?!
3シーズンぶり通算5度目の頂点に立った昨シーズンの勝因を、イギリス出身のケヴィン・マスカット監督(49)は「誰が試合に出ても、変わらない戦い方ができたからだ」と位置づけている。しかし、ただひとつ、一人だけで乗り切ったポジションがあった。高丘陽平(26)が全34試合、3060分にわたってフルタイム出場を果たしたゴールキーパーだった。
2021シーズンを含めれば67試合連続でフル出場を続けていた高丘は、今シーズンも不動の守護神として位置づけられていた。しかし、2月に入って状況が一変する。海外クラブからのオファーが届いた高丘は、熟慮を重ねた末に挑戦を決意。海外移籍への移籍を前提とした交渉及び準備のために、マリノスを離脱すると発表されたのは今月4日。開幕戦から一夜明けた18日には、アメリカMLSのバンクーバー・ホワイトキャップスへの完全移籍が決まった。
昨シーズンのマリノスはリーグ最多の総得点70をマークした。攻撃力がクローズアップされる一方で、総失点35も名古屋グランパスと並ぶリーグ最少だった。しかし、堅守の一躍を担ってきた高丘を開幕直前で欠いても、マスカット監督は動じなかった。
答えは流通経済大から加入して4年目のオビの存在にある。
昨シーズンのオビは、リーグ戦で全34試合にわたってリザーブに名を連ねた。ポジションの特性上、ゴールキーパーは一人しか先発できない。リザーブのキーパーが途中出場するときは怪我や退場など、不慮のアクシデントが起こった場合に限られてくる。
しかも、レギュラーがよほどの不振に陥らない限り、序列がシーズン中に序列が覆るケースもまず訪れない。それでも万が一の事態に備えて、身体だけでなくメンタルも常に整えて試合に臨む。全試合でリザーブを務めたのは、それだけ準備が完璧だった証になる。
「オビにとっても久々のリーグ戦だったし、彼自身、思うところもすごくあったと思いますけど、与えられたタスクをしっかりまっとうした意味で、仲間としてすごいと思う」
ベテランのMF水沼宏太(32)は気の遠くなるような作業を黙々と、なおかつ完璧に実践し続け、天皇杯王者のヴァンフォーレ甲府を下した11日のFUJIFILM SUPER CUPに続いて、高丘が離脱する状況を非常事態と感じさせなかったオビのパフォーマンスを称賛した。さらにあわや同点の一撃を防いだ、前半19分のビッグセーブに感謝の思いを捧げている。
「シュートを止めたあのシーンには本当に助けられた。マリノスの選手はどんな状況に直面しても、しっかりと準備しているということが証明されたと思う」