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横浜F・マリノスの開幕戦勝利のヒーローは193cmの大型GKオビ・パウエル・オビンナだ。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ(写真・アフロスポーツ)
横浜F・マリノスの開幕戦勝利のヒーローは193cmの大型GKオビ・パウエル・オビンナだ。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ(写真・アフロスポーツ)

30周年のJ開幕戦で横浜F・マリノスが白星発進…ヒーローとなった25歳“新守護神”オビ・パウエル・オビンナって誰だ?!

 ナイジェリア人の父と日本人の母との間に生まれ、埼玉県で育ったオビは大宮アルディージャのジュニア時代にキーパーへ転向。中高一貫で学ぶJFAアカデミー福島、そして流通経済大と順調に実力を伸ばし、同時に年代別の日本代表にも名を連ねてきた。
 しかし、マリノスでプロになった2020シーズン以降は、先輩キーパーたちが築く壁の前にはね返されてきた。過去3シーズンにおけるJ1リーグの出場はわずか7試合。そのなかには、ともに等々力陸上競技場で行われ、計5失点を喫して連敗した川崎戦も含まれる。30周年を迎える今シーズンの川崎との開幕戦が、実に702日ぶりに立つJ1リーグの舞台だった。
 舞台も同じ等々力陸上競技場で、三度目の正直で川崎へ借りを返したオビは、いままさに自らのキャリアが始まったという思いを込めながら表情を引き締めた。
「シーズンを通して出場し続けるのは簡単なことではないとわかっているので、覚悟とこだわりを持って取り組んでいきたい。それでも、こういう環境のなかでプレーできるのはすごく幸せなことですし、僕自身も試合を楽しんでプレーできたし、勝てたことが自信にも繋がった。この先も自分が全部止めて、今日のように試合の流れを変えるプレーを増やしていきたい」
 2020シーズンの途中、そして2021シーズンの後半と、出場機会を求めてJ2の栃木SCへ期限付き移籍を繰り返し、トータルで31試合に出場した。そして、2度目のマリノス復帰を果たした昨シーズンから、背番号をそれまでの「31」から「50」に変えた。
 栃木時代の「50」を、今シーズンも背負う理由をオビはこう明かす。
「栃木での経験も背負って、再びマリノスで戦いたいと思ったので」
 マリノスは高丘の離脱後に、昨シーズン限りでヴィッセル神戸を退団していたかつての守護神、飯倉大樹を獲得している。開幕戦でリザーブとしてベンチ入りした36歳のベテランは、昨シーズンの自身と高丘のように、切磋琢磨していく存在になった。
 だからこそ、勝って兜の緒を締めよ、とばかりにオビは前を向いた。
「全然下手くそだし、まだまだミスも多いので、もっと練習します」
左右のタッチライン際にいる味方への好フィードも目立ったが、パスの精度や質をさらに向上させたいと望むオビは「試合を見返して、自分の判断が正しかったのかを確かめたい」と言う。受け手に対する要求も「もっともっと突き詰めていきたい」と意気込む。
 出場資格のあった東京五輪は、残念ながら代表に食い込めなかった。それでも不断の努力を介して王者マリノスの危機を自身のチャンスに変えたオビは、年齢制限のないA代表を目標のひとつに掲げながら、プレーのスケールをさらにアップさせていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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