“悪童”ネリが11回TKO勝利でWBC世界Sバンタム級王座への指名挑戦権をゲット…「井上尚弥でもフルトンでも戦う準備はできている」と豪語
ネリはこれまでのブルファイトからスタイルを一新させていた。
1ラウンドは、慎重にスタートを切ったが、フックを合わせられたタイミングでスリップダウンを喫したことで火がつき序盤から殴り合いに出た。
一方、昨年10月に米国で井上とスパーリングを行い存在感を示していたホバニシャンは一発を狙いすぎて序盤は空回りしていた。
それでも粘り強く手を出して常にプレスをかけてくるホバニシャンに対してネリはL字ガードでパンチを見極めながらディフェンシブに展開。ステップワークも駆使して常に動きを止めなかった。プレスをかけて前に出るのは、ホバニシャンだが、つかまえることができず、逆にネリは、左ストレート、左フック、ボディーブロー、アッパーなどのカウンターパンチを打ち込み、5ラウンドには、左フックを効かせて、アルメリア人がよろけると一気にロープを背負わせて猛ラッシュをかけた。
ただ、ネリはここで仕留め切ることができず、逆に徹底したボディ攻撃に苦しめられるシーンも。終盤に入るとスタミナが切れかけたのか、手数も減り、9ラウンドには左フックを浴びて横を向いてロープに飛ばされた。それでも、ホバニシャンが右目の上と頬付近をカットするなど顔の腫れがひどくなり、10ラウンドの開始前にドクターチェックを受けると、ここが勝負どころと見て、再びスイッチオン。このラウンドにダウンを奪い11ラウンドのTKO勝利につなげた。
試合後にリング上でネリと一緒にインタビューを受けたホバニシャンは、「我々が望んだような方向に試合が向かわずにがっかりしている。しかし、これがボクシング。今日は彼が勝った。それだけだ」とうなだれた。
ネリは、本来の持ち味であるパワーや攻撃力に加えて、“目”と柔軟な上半身の動き、足を使った巧みなディフェンスでホバニシャンの猛攻を封じるなどボクシングに幅が出た。2021年5月に自らが持つWBC世界スーパーバンタム級王座をかけて、WBA世界同級王者のブランドン・フィゲロア(米国)との2団体統一戦に臨んだが、7回にKO負けをしてプロ初黒星を喫して王座から陥落していた。しかし、再起後は、2連勝。のちにフルトンと激闘を演じることになるフィゲロアに敗れた試合を教訓に確実に進化を遂げている。
井上がフルトンに勝ち、山中氏との因縁があるネリとの対戦が実現すればファンにとっては楽しみなカードとなるが、現在ネリは日本のリングからは事実上の永久追放となっている。
2018年3月の山中氏との再戦での前日計量で5ポンド(2.27キロ)もオーバー、再計量でも3ポンド(1.36キロ)も超過していたため、JBCは、その失態を重く受けとめ、日本での無期限活動停止処分を下した。井上がフルトンに勝った場合も、海外リング、あるいは、日本で対戦する場合はJBCの処分解除などの手続きが必要となり一筋縄では進まない。
また井上家では、体重超過など“反則行為”を繰り返してきたネリをチャンピオンとは認めておらず、WBCからの指令がなければ、積極的には交渉テーブルには乗りたくない相手。井上対フルトンの行方が最大の焦点だが、モンスターの次の展開からも目が離せなくなってきた。