亀田和毅が対戦相手の聴覚障がい発覚で試合中止の危機を乗り越えて“世界前哨戦”にTKO勝利…狙うはWBA王座と井上尚弥戦
しかし、それらの不安要素をすべて吹き飛ばした。
カスティージョの「変則で遅い」(和毅)スタイルに戸惑い、高速の左ジャブで主導権を握る展開でのスタートは切れなかったが焦りはなかった。
「焦らず10回やるつもりでやる」
1ラウンドが終わった際に和毅はセコンドにそう告げたという。
ガムシャラに前に出てフックをぶんぶん振りまわしてくるカスティージョに高度で多彩なテクニックを繰り出して対処した。
メキシカンの前進を「足で(パンチを)外すことがテーマだった」というサイドステップで空回りさせ、左ボディを狙い打った。
「メキシコ人はボディが弱いのがわかっていたんで」
15歳からメキシコで修行し、メキシコ人の美人の奥さんと結婚した和毅は、メキシカンの特徴を知り尽くしている。
4ラウンドには、出鼻に左ボディをめりこませ、ステップを踏みながら、左フックのカウンターを的中させた。
「アッパーに左フックを合わせるのがセコンドの指示。4、5ラウンドと接近戦を試してボディもカウンターも当たり始めた」
動きが止まると、そこにワンツー。「仕留めたい」としていた右のストレートにわずかにカスティージョの膝が落ちた。バリエーション豊かに右のオーバーフックも交え、終了間際には、左右フックに左ボディのトリプルコンビネーションを決めた。そしてフィニッシュラウンドとなる5ラウンドには、足を止めてガードを固めリングの中央で殴り合ったのである。
兄の興毅氏は「終始落ち着いていたし、考えながら練習しながら戦っていた。前より力強くなったね」と評価した。
敗れたカスティージョは、腫れた鼻をしきりに気にしながら、手話で「和毅のパンチ力はたいしたことはなかった。故意ではないと思うがバッティングで鼻にダメージを受けた。早すぎたがストップは仕方はない。彼の実力はスパーリングをしたこともありよく知っている。世界王者になれると思う」と太鼓判を押した。、
和毅は傷一つない綺麗な顔をしていた。
クリーンヒットは一発ももらわなかった。故障が続き思い切り打てなかった右のパンチを解禁。本来の持ち味であるコンビネーションブローよりも、一発、一発の強打が目立った。世界前哨戦と銘打った試合に手応えを感じた和毅は、リング上でマイクを持ちファンに宣言した。
「スーパーバンタム級が熱くなっている。(井上尚弥との)日本人対決が実現できるように、挑戦権を持っているWBAのチャンピオンに挑戦してチャンピオンになります」
現在WBAの1位は空位で2位が和毅。WBA王座への次期挑戦権を得ており、4月8日に米国テキサス州オハイオで開催予定のWBA、IBF同級王者アフマダリエフと指名挑戦者のタバレスの勝者への対戦交渉を進める。
和毅も現地で試合を観戦予定。
「サウスポー同士だけどタパレスはサウスポーが得意でない。アフマダリエフも(手術をした拳の)怪我がどうなっているか。やってみないとかわらない。どういう展開になるか楽しみ。どっちが勝ってもいいように白紙の状態で見にいく」