亀田和毅が対戦相手の聴覚障がい発覚で試合中止の危機を乗り越えて“世界前哨戦”にTKO勝利…狙うはWBA王座と井上尚弥戦
WBAのベルトを巻き、この5月に日本でWBC、WBO世界同級王者スティーブン・フルトン(28、米国)と対戦する前バンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(29、大橋)との世界戦を実現するというのが、和毅が抱くドリーム構想だ。井上がフルトンに勝てば、4団体統一戦。井上が負ければ、王者としてモンスターの挑戦を迎え撃ちたい。
しかし、4月の指名試合で有利とされるアフマダリエフと契約している大手プロモーター「マッチルーム」のエディ・ハーン代表が、タパレスに勝った後に、フルトン対井上の勝者との4団体統一戦を実現したいという発言をしている。井上がフルトンに勝てば、年内にも2階級4団体統一の偉業達成の可能性が出てきたわけが、その構想に和毅は“待った”をかける。
「WBAの順番はオレなんで。ルール上はできない、指名試合は9か月以内と決まっている。それをどけてまでやったらおかしくなる」
あくまでも優先権は自分にあると主張した。
ただ興行の世界は、時にルールが無視されてビジネスが優先される。それらの事情を十分に承知した上で金平会長もこう言う。
「マッチルームが井上選手との試合を優先したがっているのは、ようするにお金の問題だと思う。こちらも、それ相応のファイトマネーの用意をして交渉に乗り出す。10月に日本で世界戦を実現しますよ」
ちなみに和毅のフルトン対井上戦の予想は「井上勝利」。
「フルトンが日本に来るのにはビックリした。フルトンは凄く上手いボクサー。テクニックもあって足も使える。おもしろい試合になると思うが、日本であるんで(井上が)有利。井上が勝つと思う」
またスーパーバンタム級には、“神童”那須川天心(24、帝拳)が乗り込んできた。4月8日がデビュー戦。ただ天心への関心はそれほど高くはない。
「これから6回戦ですぐにはねえ。まだ世界(挑戦)はない。そこの位置(世界ランカー)に行って、オレがスーパーバンタム級にいれば、おもしろいがオレも長くない。(スーパーバンタム級で)5、6試合は無理。死にますわ(笑)」。
突きつけられている減量問題を考えると和毅が求めるWBAのタイトル戦と井上戦の2試合を消化するのが限界かもしれない。「その後はフェザー級に上げたい」との考えがあり、長期の育成計画を練っている天心とはすれ違いに終わる可能性が高い。
まず狙うはWBAのタイトル。
「サウスポーに強い選手がたくさんいるフィリピンにいきたい」
和毅はアフマダリエフとタパレスのどちらが来ても対応できるようにサウスポーとのスパーリングを目的としてフィリピン合宿の計画を練っている。
歌手の小柳ゆきが名曲を唄い、親友である柔道の五輪連覇、大野将平に花束を贈呈され、U―NEXTの配信が入るなど、1600人の観客で埋まったATCホールは、和毅を世界へと送り出すにふさわしいなかなかの舞台だった。
感謝の言葉を伝えた和毅が夢を実現するには勝ち続けるしかない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)