青森山田スタイルがJ2で通用した理由とは…FC町田の黒田剛監督が2戦目で初白星「初勝利がいつ来るのかと寝られないときも」
スーパーゴールを笑顔で振り返った黒田監督にとって、櫛引は青森山田高時代の教え子となる。群馬のボランチで先発フル出場した天笠泰輝(22)も然り。黒田監督は「昨年までは教え子の活躍を、応援している側だったんですけど」と思わず苦笑している。
「それが対戦相手になるのは運命的なものを感じますし、すごく感慨深いものもある。これからの戦いでも教え子は大勢いるので嬉しい反面、負けたくないという気持ちもありますね」
黒田監督が人知れず抱いていた不安をさかのぼっていけば、町田の新監督就任が発表された昨年10月に行き着く。青森山田高のサッカー部監督だけでなく、保健体育科教諭と主幹教諭も務めていた指揮官は「私はこれまでプロの指導者としての経験がなく、私の就任について不安を感じられることもあるかもしれません」と言及。さらにこう続けていた。
「ただ、長きに渡り培ってきた『勝者のメンタリティー』はどのカテゴリーであっても、失われるものではないと信じております」
勝者のメンタリティーとはイコール、1995年から監督を務めてきた青森山田を高校サッカー界屈指の強豪校に育て上げたメソッド。もっといえば町田にも導入された高さと強さを前面に押し出した堅守であり、セットプレーから確実にゴールを奪うしたたかさとなる。
「2試合を通じて失点がゼロで、決定機もそう多くは作られていないところは、まだまだ修正の余地はありますけど、それでもこれまでやってきた成果なのかなと思っています。流れのなかでゴールを取れていない点にはいろいろとありますけど、リスタートも含めたトータルで最終的にわれわれが勝ち点3を取るというコンセプトで戦っていきたい」
第2節を終えて4チームだけになった無失点グループの一角に名を連ね、連勝スタートしたモンテディオ山形、藤枝MYFC、大分に次ぐ4位につける現状を指揮官はこうとらえた。同時に42試合を戦う長丁場のJ2戦線には、本音とも冗談とも受け取れる言葉を残している。
「サポーターの方々に守られながら、サッカーができる場所を提供させてもらっているとすごく感じています。これからも僅差が続く戦いがあと40試合もあると思うとちょっと気が遠くなるというか、もっと減らしてほしいと思いながらも、選手たちがポジティブな姿勢で次の試合へトレーニングしていけると考えると、勝つことはやはり一番いい材料ですよね」
次節は3月5日にツエーゲン金沢と、黒田監督にとって初めてとなるアウェイで戦う。最終的な姿を、セットプレーも含めて「何でもできる」チームに定めながら、好スタートを切った新生ゼルビアはシーズンを一戦必勝で戦いながら現在進行形で進化を遂げていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)