なぜ阪神の岡田監督は沖縄キャンプの総括を「70点」としたのか…足りない30点とは?
ポジション争いが激化したのも今キャンプの特徴だった。常に緊張感が漂い、チームの雰囲気が激変したことを岡田監督は「若い選手が多いんで声も出るし元気もある。ポジション争いもあるので個人、個人が緊張感を持ってやっていた結果」と評価した。
特に熾烈な競争となっているのがショートとライト。岡田監督は、当初、ショートに関しては守備力を優先に小幡竜平を頭に描いていたが、木浪が19日のサムスンとの練習試合では、サイクルに王手をかけたほど打ちまくってアピールに成功。ライトのポジション争いには、「オレはなんも言うてへんのに、みんなライトを守りたがる」と岡田監督が戸惑うほど、新外国人のヨハン・ミエセスや、復活にかける高山俊らがこぞって参戦した。
その中で一歩リードしているのが、足の怪我で2軍スタートとなっていたドラフト1位の森下だ。11日の1、2軍合同紅白戦から存在感を示し、26日の日ハムとのオープン戦では猛打賞をマーク。積極性と、バットスイングのスピード、パワーだけでなく、ボールを見極める能力があり、なにより肩が強く守れる。結果も伴っていることから岡田監督に「出遅れたが合流してからは、思っていた以上の姿を見せてくれた。実戦でも結果が出ている。これから、どんどんいいピッチャーとオープン戦で当たっていくので、早くそういうピッチャーにも慣れて戦力になって欲しい」と言わせた。
オープン戦のどこかで壁にぶつかるだろうが、森下を「3番・ライト」の開幕スタメンで使えれば、虎党歓喜の4番・大山悠輔、5番・佐藤輝明のドラフト1位トリオでクリーンナップを組むことができる。
もう一人目立ったのは板山だ。岡田監督が秋季キャンプで能力を見直した一人。25日のヤクルト戦でチームのオープン戦第1号を放つなどバッティングでアピールしているが、内外野できるのも利点で、当初、レフトを予定していたノイジーがペースダウンしたため、開幕ライトのポジションを森下が獲得したとしても、板山か、MVPに指名された井上が、レフトで開幕スタメンに抜擢される可能性はある。井上は右で板山が左。相手投手によってメンバーを変えるオプションも生まれた。原口文仁、糸原健斗の右左の代打要員も好調で明らかにチームの選手層は厚くなった。
また投手陣に目を向けると、才木浩人と西純矢の若手2人がキャンプの序盤から飛ばし、岡田監督が2人の名前をあげて称えるケースが目立った。才木はトミー・ジョン手術を経て2年目。西純も、昨年開幕のローテーからは外れていたが、この2人がシーズンを通じてローテーを守る見込みが立ったのがなによりの収穫だろう。中継ぎ陣では、加治屋蓮や、変則左腕のルーキー富田蓮らがアピールの成功組となる。
そしてキャンプで鍛えられたのが内外野の守備力だ。丁寧なボールの扱いや正確なスローイングなどシートノックでの動きが目に見えて変わっていたので驚いた。何人かの阪神OBに話を聞いたが、誰もが、ここ5年連続で失策数のリーグワーストを続けていたチームの弱点が確実に強化されたことを認めていた。外野手にはカットマンまで正確に強いボールを返すことを徹底させ、二遊間の併殺プレーは確実に決める。捕手が後逸した際のバックアップや、ランダウンなどのチームプレー、投手を絡めてのサインプレーの練習に時間を割き“守る野球”の下地を作った。これも、金本、矢野政権の7年間では徹底できていなかった岡田監督ならではのキャンプの成果だろう。三塁・佐藤、一塁・大山とポジションを固定して1か月練習を重ねることができたことも大きい。