なぜW杯の失敗を教訓に日本代表の国際親善試合にPK戦を導入する計画が立ち消えになりそうなのか?
2018年9月に船出した第1次森保ジャパンで、クロアチア戦は通算62試合目にして初めてPK戦へ突入した一戦だった。U-24代表監督を兼任した東京五輪では、U-24ニュージーランド代表との準々決勝で経験した。4-2で制したPK戦に臨んだキーパーとキッカーのうち、クロアチア戦の舞台に立ったのはキャプテンのDF吉田麻也(34、シャルケ)だけだった。
果たして、立候補制が取られたキッカーは1番手のMF南野拓実(28、モナコ)と2番手のMF三笘薫(25、ブライトン)が立て続けに相手キーパーに止められる。クロアチアの3人目こそ左ポストに当てて外したが、続く日本の4人目の吉田も失敗。クロアチアの残る3人が強烈な弾道の一撃を突き刺し、1-3で涙をのんだ試合後に吉田はこんな言葉を残していた。
「PKに関しては運もあるけど、僕も含めて3本も外したらさすがにきつい」
しかし、W杯カタール大会で団長を務めた反町委員長は「PK戦だから運に任せる、で終わってしまってはいけない」と悲願のベスト8に届かなかった理由を総括。帰国後に開催した技術委員会後のメディアブリーフィングで、準々決勝でもPK戦の末にブラジル代表を撃破したクロアチアを引き合いに出しながら、PK戦をより多く経験する重要性を訴えていた。
「勝負のひとつであるPK戦での勝負強さを身につけていくためにも、鉄は熱いうちに打っておいた方がいい。代表活動でもそうしたことを積極的に、地道にやっていきたい」
勝負強さを身につけるための強化策のひとつが国際親善試合後のPK戦の導入であり、すでに昨年末に行われたU-19代表やU-16代表の海外遠征で実施された。前者は国際親善試合の直前に対戦国側が、後者は反町委員長の指示を受けて日本側がそれぞれ打診していた。
直近ではウズベキスタンで開幕したAFC・U-20アジアカップに臨むU-20代表が、2月26日に行われた地元クラブとの練習試合でPK戦も経験した。大会本番へ向けて前後半で多くの選手が入れ替わったため、ハーフタイムと試合後にそれぞれPK戦を実施した。
U-20代表の団長を務める反町委員長は、滞在先の首都タシケントからオンラインで応じたメディアブリーフィングで「ベスト8に進めば(決勝トーナメントで)PK戦もあるので、みっちりと練習しています」と現状を報告。PK戦を取り入れた意味をこう強調した。
「自分たちの練習のなかで経験するのと、相手チームとの試合中に経験するのとではやはり感覚も違うし、キーパーのフィーリングも違ってくる。われわれの課題を解消していく意味では、練習試合のなかでPK戦を実施したのは非常によかったと思っています」
一方でアンダーカテゴリーの代表チームが臨む国際親善試合ゆえに、直前の交渉を経て試合方式を変えるイレギュラーな開催方式が可能になるとも話している。
「アンダーカテゴリーだから、ということもあるなかで、お客さんが入ってるスタジアムで、興行としてやる(A代表の)状況ではなかなか難しいものがあるとも思っています」