なぜW杯の失敗を教訓に日本代表の国際親善試合にPK戦を導入する計画が立ち消えになりそうなのか?
年代別代表の選手たちが成長を遂げ、やがてA代表でプレーすると考えれば、さまざまなシチュエーションでPK戦を経験している現状は意義がある。しかし、続投する森保監督のもとで再出発するA代表が、PK戦の経験不足を解消していくにはどうすればいいのか。
実は日本を下したクロアチアが、ヒントを与えてくれた。
日本戦へ向けたウォーミングアップ。クロアチアはペナルティーエリアのライン上にボールを並べて、フィールドプレーヤーが順に思い切り蹴っていく独特のメニューで締めた。当時は「ユニークな練習だな」と思ったGK権田修一(34、清水エスパルス)は、明確な意味を持ったメニューだったのではないかと帰国後に出席したトークイベントで振り返っている。
「置かれたボールを並べて、順に強く蹴っていく練習なんて日本ではやらないじゃないですか。もしかしたら彼らなりに、しっかり蹴ることでPKの感覚をつかんでいたのかな、と」
森保監督もW杯カタール大会後に「運と訓練の両方がある」とPKについて言及した。そのうえで「訓練」に対して「狙ったところにもっと強いボールを蹴れれば、相手キーパーとの駆け引きができる」と今後をみすえた。即効性はないかもしれないが、クロアチアが取り入れていたメニューを積み重ねていった先に、PKの質を高める成果がもたらされるかもしれない。
今年の森保ジャパンのスケジュールを見れば、6月と10月にも日本国内で国際親善試合が2戦ずつ予定されている。すべてで3月と同じく地上波での生放送があると考えれば、今後も国際親善試合後にPK戦を導入するプランの実現は難しいかもしれない。
それでも来年1月にカタールで開催されるアジア杯での覇権奪回と、2026年にアメリカ、カナダ、メキシコで共同開催される次回W杯の上位進出を見すえたときに、日本代表チームとしてPK戦の経験値を上げていく作業は必要不可欠だと反町委員長は力を込めた。
「カップをかけて争う場合は、最後は必ずトーナメント方式になる。PK戦は避けて通れないし、そういうチャンスがあればできる限りやっていきたい方針は変わりません」
前後半の90分間、あるいは延長戦を含めた120分間を勝利で終えれば問題ない。そのための力を身につけていくとともに、公式記録上では引き分けになるクロアチア戦で流した涙を無駄にしないためにも、さまざまな角度から次のステージへ勝ち上がる可能性を追い求めていく。
(文責・藤江直人/スポーツライター)