本当に大丈夫?!投打に不安を露呈して中日に完敗の侍ジャパンで見えてきたWBC本番で「使える選手」と「使えない選手」
7回途中から松井を救援した栗林は、1回と3分の1で4奪三振。9回を任された巨人の大勢は自己最速タイとなる159キロをマークして3人でピシャリと締めたが、橋上氏は、内容的には不安が残るものだったと分析した。
「クローザーを誰と決めてしまわないのかもしれないが、現状で言えば、東京五輪の経験もある栗林を最後に持ってくるのがベスト」というのが、橋上氏の見立て。栗山監督は、1点を失えば終わりの国際試合の戦いでは、イニング途中の継投を視野に入れており、この日、栗林を途中投入できた経験を「いつも抑えやっているピッチャーがああいうケースでいく場面はないので凄くよかった。経験してもらえたのは大きかった」と評価。「どういう風にみんなで作っていくかしっかりと考えてやっていく」と、吉井投手コーチと相談しながら、勝利方程式の構築に知恵を絞っていくことを明かした。
栗山監督はチームコンセプトを「基本的には投手を中心に我慢しながら、守り切って勝ち切っていく」としていた。その肝心要の投手陣が、WBC開幕6日前に調整不足を露呈したのは問題だろう。
不安が残ったのは投手陣だけではない。
打線も、まだ春冷えしたままだった。
中日の開幕投手に指名された左腕の小笠原に牛耳られた。4回に「3番・一塁」で起用された横浜DeNA牧が、ショートへの内野安打で出塁。4番のヤクルト村上が、宮崎合宿から3試合目にして初ヒットとなる一、二塁を破る一打で続き、無死一、三塁とし、第1打席で小笠原のウイニングショットのナックルカーブに対応してレフト前ヒットを放っていた絶好調の巨人の岡本の三塁ゴロの間に同点としたが、5回までヒットは3本で1点だけ。6点差をつけられた8回二死二塁に、牧が祖父江から、技ありのライト線を破るタイムリーツーベースで1点を返したが、反撃はここまで。
栗山監督も打線の状態について聞かれると「いいときもあるし、なかなか上がってこないこともある。本番に向かって全員が上がってくれると信じて前へ進んでいきます」と返すしかなかった。
橋上氏は、低調打線の理由をこう分析した。
「この時期は、投高打低になるものだが、打線に関しても、調子が上向きの選手と上がってこない選手にハッキリと分かれた。WBC公式球は重たく、打者からしてもボールが飛ばないと感じるため、ついつい力んで強振してフォームを崩す。村上にしてもバットが遠回りしているのは、そのせいだと思う。国際試合ではよりコンパクトなバッティングを心掛ける必要がある。対応できているのは、近藤、岡本、牧の3人、逆に山田、山川あたりは、この状態では苦しい」
3試合で近藤は7打数5安打1打点、岡本は9打数4安打5打点、牧は8打数4安打1打点。対照的に山田は9打数無安打6三振、山川も8打数無安打3三振とヒットが出ていない。
ただ打線に関しては光明がある。
この日から大谷とヌートバ―の2人が合流。日本人の母を持つヌートバーは、祖父の名前を取って「タツジ」と言うミドルネームがあることから、全員が「たっちゃん」と書かれたTシャツを着て歓迎の意思を示し、「たっちゃん」の愛称で呼ぶことを決めた。