パリ五輪選考会MGCチケット贈呈式欠席も大迫傑が東京マラソンで日本人3位の2時間6分13秒を出し復帰をアピールできた理由とは?
東京マラソン2023が5日、東京都庁発―東京駅丸の内着の42.195キロコースで行われ、男子では山下一貴(25、三菱重工)が日本歴代3位となる2時間5分51秒の好タイムで日本人トップの7位に入ったが、最後までデッドヒートを演じてレースを盛り上げたのが、昨年2月に現役復帰を決めた東京五輪6位入賞の大迫傑(31、Nike)だった。日本人3位となる2時間6分13秒の全体9位でゴールし、パリ五輪の代表選考レースであるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC、10月15日・東京)の出場権を獲得した。だが、大迫は”今後”についての明言を避けて“MGCチケット贈呈式”を欠席した。大迫はパリ五輪を狙うのだろうか。
引退前と変わらぬレーススタイル
どれだけ人気があっても、スポーツの世界は〝実力〟をごまかすことができない。大迫の現役復帰は〝本物〟だった。
東京マラソン2023の男子は中間点を1時間2分08秒で通過。トップ集団には15人ほどの日本人選手が含まれており、好タイムの期待が高まっていく。30㎞は1時間28分39秒で通過してペースメーカーが外れた。
35㎞付近で井上大仁(三菱重工)が苦しくなり、日本人トップ争いは大迫、山下、其田健也(JR東日本)に絞られる。37㎞付近で海外勢がペースを上げると、日本勢3人が競り合うかたちになった。
ここまでオーラを抑えるように走ってきた大迫は38㎞過ぎに山下の前に出る。しかし、前に攻め込むことができず、また後退した。40㎞を過ぎて右脇腹を抑えるシーンを何度も見せると、残り1㎞で其田にも逆転を許す。
それでも大迫は2時間6分13秒の9位でフィニッシュ。2度の日本記録(当時)につぐ、サードベストで3年ぶりの東京マラソンを走破した。
大迫は「ラストラン」として臨んだ2021年夏の東京五輪で6位入賞。一度は現役を引退した。しかし、昨年2月に「現役復帰」を宣言する。
「東京五輪をひとつのゴールにしたんですけど、第2章として、どこまで世界と戦っていけるのか挑戦したいんです。また、これから育っていく選手たちの背中を押すだけじゃなくて、背中を見せて引っ張っていきたい。それができれば、僕自身もそうですし、日本陸上界がもっと強くなっていくんじゃないかなと思っています」
大迫の第2章は、これまでと同じ道をたどるのではなく、新たな道を模索しながら、進んでいるようにも見える。
早大時代は「駅伝」よりも「トラック」にフォーカスして取り組み、実業団時代はニューイヤー駅伝の存在を疎ましく感じていたが、昨年10月にはGMOインターネットグループに参画。プレイング・ダイレクターとして所属選手への指導やアドバイスを送りながら、自身も8年ぶりとなるニューイヤー駅伝に出場(3区2位)した。
マラソンは昨年11月のニューヨークシティが復帰戦で2時間11分31秒の5位。今回の東京に向けては、ニューイヤー駅伝後にケニアで合宿を行い、良いトレーニングが積めたという。レース2日前のプレスカンファレンスでは以下のような意気込みを語っていた。
「復帰してから練習の変化はありません。練習はいつもベストなトレーニングをやっています。マラソンは30㎞からが勝負なので、そこまでどれだけ省エネで走れるのか。タイムはあまり気にしたことがないので、今回も冷静に対応していきたい。自分がコントロールできないことより、今まで通り、いつも通りのことを心掛けたいと思っています」
今回のレースを見た限り、大迫のレーススタイルは引退前とまったく変わっていなかった。そして、レース後の表情は非常に晴れやかだった。
「例年、東京マラソンは小刻みなペースの上げ下げがあるので、前の方に行くとどうしてもきつくなる。今回も様子を見ながら、冷静にレースを進められたかなと思います。前半は結構速い展開だったので、割と動かした感じはあったんですけど、後半ペースが落ちて楽になりました。最後はちょっと差し込みがきたりしましたが、全体的なダメージはいつもより少ないのかなと感じています」