なぜ5.7横アリで井上尚弥とフルトンの「世界が注目の史上最大のビッグマッチ」が実現するのか…奇跡的タイミングと日本で急速に発展する映像配信ビジネスマネー
当初、フルトンは、階級をひとつ上げて2年前に激戦を演じて判定勝利した元WBC、WBA世界同級王者ブランドン・フィゲロア(26、米国)とWBC世界フェザー級暫定王座決定戦として2月25日に再戦する予定で報道も流れた。
本田会長は、昨年12月13日に井上がWBO世界バンタム級王者のポール・バトラー(34、英国)を11回KOで下して4団体統一に成功した翌日からスーパーバンタム級のマッチメークをスタート。フルトン戦はあきらめ、大橋秀行会長が希望する別の対戦相手との交渉を考えていたが「まだフルトンがフィゲロア戦の契約書にサインをしていない」との情報をキャッチ。急転、フルトンとの交渉に乗りだした。
WBCとの調整や代替選手の確保、フルトンのトレーナーが井上戦に反対したことなど、乗り越えねばならないハードルも多かったが、最終的にフルトン本人が決断したという。
まさに奇跡的なタイミングでの決定で、本田会長は、「こんなことは珍しい。大橋会長が持っているのか、尚弥が持っているのか。お金(ファイトマネー)もあるけれど、最終的にはフルトン本人の決断。日本まで来てもやる価値があると認めてもらっているということ。誰もがスーパースターとやりたいんですよ。負けてもいい勝負をすれば価値も下がらない。勝てば凄いことになるんだから」と経緯を説明。
フルトンは、この日の会見にVTRで出演し、「今まで多くのボクシングファンから『あの選手との対戦を避けている。逃げている』とたくさん言われてきたので、そうでないことを証明するためにも井上との対戦を熱望した。私はチャレンジすることや興奮できるような試合をするのが好き。井上と対戦できるのであれば断る理由はない」とモンスターの挑戦を受託した理由を語っていた。
もちろんフィゲロア戦の倍以上とされる高額なファイトマネーが提示されたことも決断の理由としては大きい。2年前のフィゲロア戦のファイトマネーが約100万ドル(1億3600万円)で、今回の再戦では、さらに上積みされていたというから、かなりの金額になる。放映料が最高でも1億円程度だった地上波のテレビ局がボクシング中継をしている時代では、とうてい実現は難しい興行規模だが、映像配信ビジネスの急速な発展で、その巨額なマネーを捻出できる環境が日本にできつつある。