「不快だ」「失礼だ」と批判の声も出てきたアマプラのWBC侍ジャパン中継は本当に“迷走”しているのか?
斉藤アナは、自らのSNSのプロフィール欄に「文化放送ライオンズナイター実況(とりわけ絶叫)アナウンサー」と書いている通り、独特の喋りや表現スタイルに加え、野球への造詣が深く熱心な取材と人脈に裏付けされた情報量に西武のファンを中心に斉藤ファンも多い。号泣、絶叫アナとしても有名。一方で露骨な西武贔屓の実況に批判的な見方もあった。
今回の斉藤アナへの批判に関して、関係者の1人は、「パ・リーグのラジオ中継と、大谷が出てくる侍ジャパンの全国区レベルの映像配信では、視聴者の反応が違う。贔屓の度合いや、言ってはならないタブーなど喋る側の免疫力という意味ではなかったのかも。ラジオ実況で染みこんだ喋り続けるというスタイルは急には変えることができないだろうし、今回の騒動で落ち込んで持ち味が消えないかが心配」と同情していた。
また野球に興味のない層の視聴者の取り込みを意識して、MCにお笑いコンビ「EXIT」の兼近さんを起用しているが「兼近はいらない」「知識があまりにもなさすぎ」「兼近がいる意味が本当にない」という不要論もヒートアップした。さらにカメラワークにも問題があり、切り替えが遅く、メイン映像に肝心のプレーが映らないケースもあった。
アマプラが、スポーツのライブ配信に乗りだしたのは、昨年4月に行われたプロボクシングのロンドン五輪金メダリストで、WBA世界ミドル級スーパー王者の村田諒太(帝拳)とIBF世界同級王者の”ミドル級最強”ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)の世紀の一戦からだ。従来の地上波の何倍にも相当する巨額な放映料を支払ったが、記録的な視聴数と新規の契約件数が、ハッキリと数字で表れたため、続いて当時バンタム級2団体統一王者だった井上尚弥(大橋)とWBC同級王者のノニト・ドネア(フィリピン)の再戦を独占配信して、さらに数字が伸びた。その後、第3弾も配信、4月8日には、那須川天心(帝拳)のボクシングデビュー戦を独占配信するが、関係者によると、アマゾンは「スポーツのライブ感と配信事業のマッチングの良さ、これまでになかったユーザー層を開拓できたこと」を評価。スポーツを優良コンテンツとして認め、ボクシングに続くコンテンツを探している中で、短期間の集中開催で、大谷が参加するなど話題になることが間違いないWBCに目をつけたという。本番は独占配信ではなく、地上波でも放映されるが、その時間帯に、交通機関を使っての移動や、仕事、会食中で、テレビを見ることのできない環境にいる人たちに対してのアプローチが可能だと期待し、かなりの巨額な資金を投入した。
メジャーが選手の天文学的な年俸を捻出できている資金源のひとつに有料映像配信からの収入がある。日本では「DAZN」が参入しているが、競合がなければ放映料もアップしない。今回のアマプラのWBC中継配信の成否は、ボクシング界のビジネススタイルを劇的に変えたように今後の野球界に大きな影響を及ぼす可能性もなくはない。たとえば、今後、クライマックスシリーズや日本シリーズなどの短期決戦だけを再びアマプラが“買い“に出る可能性もあるだろう。