「不快だ」「失礼だ」と批判の声も出てきたアマプラのWBC侍ジャパン中継は本当に“迷走”しているのか?
アマプラは、地上波とは違う独自のカラーを出そうとして、ラジオ実況の斉藤氏を抜擢。解説陣にもWBC経験者の稲葉篤紀氏、井端弘和氏、里崎智也氏、福留孝介氏の豪華メンバーを登用する。今日9日の中国戦には第1回大会の優勝監督でソフトバンク球団会長の“レジェンド”王貞治氏を特別ゲストに招く。また「プレゼンテーションスタジオ」というスタジオ解説も用意。MCは元巨人のチアリーディングのメンバーでサッカーの4級審判員の資格などを持つスポーツキャスターの中川絵美里さんをMCに、WBCでのコーチ経験がある前西武監督の辻発彦氏が起用され、違った目線での意見を求め、またデータスタジアムからの独自のデータを紹介するなど多角的な見せ方を試みていることも特色となっている。ネット配信らしく、ネット裏からのカメラ、選手用カメラにも切り替え可能だ。
ただ現状は、それらの仕掛けは空回り、斉藤アナの実況も含めて「まだ中継のコンセプトに関しては迷走している」という声も現場の放送関係者から聞かれる。4日の中日戦では、斉藤アナ、里崎氏、福留氏の3人は、地上波の副音声で行っているような、かなりくだけたトーンで試合の進行そっちのけで雑談的なエピソードトークに走っていた。それはそれで面白かったが、斉藤アナ、里崎氏、井端氏で組んだ7日のオリックス戦では、一転、骨太な野球路線に少し寄ったような内容。本番に向けて、いい意味で言えば、試行錯誤、悪く言えば確かに“迷走“している。
サッカーのW杯では、ABEMAが元日本代表の本田圭佑氏を解説者として採用。普段、放送席に座ることがない本田氏の独特の解説は評判を呼んだ。マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏をキャスティングできれば最高のスペシャルな中継体制になったのかもしれないが…。
ただアマプラの事情に詳しい関係者によると独占配信となった中日戦とオリックス戦の視聴数は「想定を超える凄いもの」だったという。注目度の裏返しが、炎上騒ぎを起こしたとも言える。結局のところ、実況や解説よりもファンが見たいのは、侍ジャパンが勝利する姿なのだ。
個人的には斉藤アナの実況は興味深く聞ける。「村上は右のかかとを上げ下げしてタイミングをとるようになっている」と鋭い観察眼を披露。豊富な野球の知識を随所にちりばめて解説者の“深い話”を引き出し、従来のテレビのアナウンサーとは違う“聴きごたえ”のある実況をしていた。ネットの声の中には「これだけ豊潤な情報量を持っている実況アナはそうはいない」「素晴らしい実況。今までの当たりさわりのないクソ真面目でマニュアル通りの実況より1000万倍マシ」という支持があったことも紹介しておきたい。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)