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ヌートバーが5回に超ファインプレーで日本のピンチを救う(写真:AP/アフロ)
ヌートバーが5回に超ファインプレーで日本のピンチを救う(写真:AP/アフロ)

ヌートバ―の“侍魂”と韓国から消えてしまっていた気迫…3点をリードされた日韓戦が13―4の大差に終わった焦点とは?

 ヌートバーは燃え続けていた。
 6回無死一、三塁で韓国のキム・ユンシクのスッポ抜けたボールが背中を直撃するとバットを放り投げてマウンド上の左腕を一塁に歩きながらずっとにらみつけた。試合後には「ちょうど凝っていたところにぶつかってほぐれたので、ちょうどよかった(笑)」 と絶妙のジョークで、このシーンを振り返ったことが、またファンの共感を呼ん。だが、ヌートバーの剥きだしにした闘争心が、5点のビッグイニングを生むことになったのである。
 ヌートバーは隙を見逃さない走塁でもチームを鼓舞した。
 7回に一死一塁からライト前ヒットを放ったが、打球を処理したライトが無造作に三塁へ送球した瞬間、一気に二塁を陥れた。中国戦でも全力疾走で、一塁手にプレッシャーをかけて2つのミスを誘って出塁しているが、彼の全力疾走は、目に見えない武器のひとつ。まさに“走攻守”に渡る活躍で、侍ジャパンの圧勝を牽引した。
 試合後の公式会見で栗山監督は、ヌートバー効果につい、「それは僕がここで説明することではなく、ファンのみなさんが見て感じてくれていること。選手たちも、それを感じながらやっているし、彼の、がむしゃらさだったりというのは、間違いなくチームに勢いをつけてくれている」と認めた。 
 北京五輪の日本代表でチーフスコアラーを務めた三宅博氏は、「ヌートバーの懸命さと気迫は韓国の野球と好対照だった」と指摘した。
「15年前の北京五輪で我々は韓国に予選リーグ、準決勝で2敗した。その時の韓国のエースだったキム・グアンヒョンとキム・ヒョンスがまだ代表で頑張っているのには驚いたが、世代交代が進んでいない証かもしれない。あの時の韓国は、バッターはベース寄りに立ち、インコースのボールに対して逃げずにデッドボールでも出るんだと当たりにきていたし、バッテリーは内角をがんがん攻めてきた。絶対に負けられないという気迫にあふれていた。だが、この日の韓国には、そういう姿が見られなかった。対照的に絶対に負けられないという懸命な全力プレーを体現していたのがヌートバー。一流選手が集まる代表チームをまとめるにはムードメーカーが必要で、結果を伴っている選手が好ましいが、本当の侍魂というようなものを持って勇敢に全力でプレーしているヌートバーが、そういう存在になっている」
 韓国の国内プロでは、外国人投手頼みとなり、投手陣のレベルアップができていない。ベスト4に入った2006年大会、決勝で日本と対戦した2009年大会、そして金メダルを獲得した2008年の北京五輪のチームからは大きく様変わりしていた。だが、三宅氏は、戦力はもとより、戦う姿勢に日韓に差があり、その象徴がヌートバーだったと指摘するのである。
 実際、韓国メディアも「韓国は何がなんでもというベンチの雰囲気を感じさせず、指揮官の戦略も目的も見つけられない無気力な展開が続いた」と報じていた。

 

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