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チェコのメンバーは2-10の大敗にもかかわらず敬意をこめて侍ジャパンに拍手を送った(写真:CTK Photo/アフロ)
チェコのメンバーは2-10の大敗にもかかわらず敬意をこめて侍ジャパンに拍手を送った(写真:CTK Photo/アフロ)

なぜチェコのアマ他職業兼任集団は年俸総額150億円超えの侍ジャパンを相手にドームに“爽やかな風”を吹かせることができたのか?

 さすがに、この回につかまってレッドソックスの吉田正尚(29)の2点タイムリーなどで3点を失い、4回には、大谷に打球速度190キロを記録したライトフェンスを襲うタイムリー二塁打などを浴びて“炎上”。球数制限もあってマウンドを降りたが、チェコの国内リーグで通算60勝を挙げたサトリアは、どうやらメジャーMVPの大谷を三振に打ち取ったボールを記念に持ち帰ったようで、精神科医が本業のパベル・ハジム監督(51)は公式会見で「大谷翔平選手はどれだけのヒットを打っているか数え切れないような選手。その彼から三振を奪ったことをサトリアは生涯忘れないでしょう。死んでもいい気持ちだったのでは」と、侍を苦しめた右腕の気持ちを代弁した。
 かつてのセ・リーグの某タイトルホルダーによると「ああいう遅い球の投手は一流打者になればなるほど逆に打てなくなる。打撃投手を打つ感覚でやればいいと言う人もいるかもしれないが、集中している打席で楽に打つのは難しい。遅い球に的を絞って、ストレートをファウルにするのが、基本の対応だが、初速が似ているボールの錯覚で、その遅い球になかなかアジャストできずストレートも速く感じるものなんだ」という。
 オリックス、阪神で活躍した星野伸之氏が、100キロ台のスローカーブを駆使して130キロ台のストレートを速く見せる魔法のような投法でで通算176勝したが、サトリアは110キロ台のブレーキのかかったチェンジアップと最速127キロのストレートで同じような錯覚を生み出していたのかもしれない。ちなみにサトリアの本業は、国営の電力会社に勤務する電子技師。
 チェコは、爽やかな風をドームに吹かせた。
 3回には、ヌートバーの一塁左を襲う強烈な打球をマルティン・ムジーク(26)が止め、カバーに走ったサトリアとの素晴らしい連携で間一髪アウトにした。ちなみにムジークの本業は歯医者。
 そして4回には、ウィリー・エスカラ(24)の左膝を佐々木の160キロを超えるストレートが直撃するアクシデントがあった。不気味な音が響き、エスカラは、その場で仰向けに倒れ込み一塁ベンチでは大谷が頭を抱えた。
 だが、エスカラは立ち上がって笑顔で一塁へ歩き出した。一塁ベースで山川は帽子を脱いで謝罪して何か話しかけると「大丈夫だ」とばかりに、山川の背中に笑って手をやり、足の状態を確かめるようにファウルグラウンドでダッシュした。歩き出した瞬間から拍手を送ったドームの観客は大歓声でエスカラのスポーツマンシップとファイトを称えた。
 2-10の大敗にもかかわらず試合後にチェコのメンバーはベンチ前に並び侍ジャパンに敬意を込めて拍手を送り、佐々木のヒーローインタビューを笑顔で見物。スタンドのファンに帽子を取って手を振って感謝の意を伝えた。
 ハジム監督は「日本で野球は重要な意味を持っている。ファンのあたたかい視線や、応援が素晴らしく、私たちも、それを感じて頑張れた。日本の野球ファンのレベル、質も世界一だと思う」と話した。

 

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