なぜチェコのアマ他職業兼任集団は年俸総額150億円超えの侍ジャパンを相手にドームに“爽やかな風”を吹かせることができたのか?
チェコに野球が伝来したのは1920年と言われているが、活動が活発化したのは、1989年の冷戦終結以降で、人口1050万人のチェコにおいて野球人口は、まだ7000人程度とされる。国内で盛んなメジャースポーツはユベントス時代にバロンドールに輝いたパベル・ネドベドらを輩出したサッカー、長野五輪で金メダルを獲得したアイスホッケー、4大大会の女子シングルスで通算18度Vのマルチナ・ナブラチロワらを生んだテニスなどで、野球はマイナー競技だ。
現在、チェコの国内リーグは、チームによっては月給が支払われるが数万円程度で、プロ化はしていない。1部のエクストラリーガは、8チームで形成され、年間36試合だけ(プレイオフなど除く)。選手のほとんどが本職を別に持ち、金融トレーダー、消防士、学校教師、営業マンなど様々。
代表チームは過去に2007年に行われた北京五輪のプレ大会で日本に2-3で敗れたものの、延長戦まで追い詰める健闘を見せたが、一方でWBCは、これまで2013年、2017年と予選で敗退してきた。ただサッカーの強化システムに倣い、ユース世代の育成には力を入れ、共通の指導マニュアルを徹底。コーチには資格が必要で、2015年に日本で開催されたU-18のW杯にも出場、昨年台湾で開催されたU-23のW杯ではメキシコを破る金星もつかんだ。そのピラミッドの底辺をさらに拡大するためにも、多くの選手が全試合が国内でテレビ中継される今回のWBCで「子供たちに夢を与えたい」と口にしていた。
前日に中国から逆転で歴史的なWBC初勝利をつかみ、年俸総額150億円を超えるスター集団の侍ジャパンを相手に、ほぼアマチュアで他職業を兼業している集団のチェコが見せ場を作った。確かな爪跡を残した意義は計り知れない。
ハジム監督が胸を張る。
「国内の野球熱は、自然に高ぶってくると思う。ベースボールのパワーをみんなに知らせることができた。もっといい成績を残したいと思うが、今後、野球はチェコの人気スポーツの上位に入ってくると思う」
今日12日は韓国戦。爽やかなチェコの風が再びドームに吹きそうだ。
(文責・RONSPO編集部)