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2013年のWBC準決勝で日本は井端氏と内川宇Jの重盗失敗が響きプエルトリコに敗れてV3を達成できなかった(写真・アフロ)
2013年のWBC準決勝で日本は井端氏と内川宇Jの重盗失敗が響きプエルトリコに敗れてV3を達成できなかった(写真・アフロ)

WBC準決勝で思い出す10年前「悪夢の重盗失敗」…元戦略コーチが語る真実とメキシコ戦に向けての教訓

 しかし、次の瞬間に悲劇が起きる。スタートを切った井端がストップ。内川は、それに気がつかずに、二塁手前まで走り、飛び出した形となり挟まれてアウトになってしまったのである。万事休す。二死となり、阿部はセカンドの右を強襲するゴロを放ったが、攻守に阻まれる。
「井端はスタートが遅れました。途中でストップしたけれど、内川は、てっきり走ったと、思い込んでいたんですよね。三盗、重盗にディスボール(この球で必ず走れ)のサインは通常ありません。行けたら行けのグリーンライトで、フォームを盗むとか100%成功するという確信があるときしか二塁走者は行けないのですが、あの投手は100%走れる投手だったのです。内川のミスですが、後々聞くと、井端は“偽装スタートだった”と言うんです。チームとしての意思疎通がかけていたのかもしれません」
 井端は、「俺の足なら無理。行く素振りだけでいいだろう」と、偽装スタートを試みて、内川まで騙されてしまったのである。
 ベンチと一、三塁コーチ、井端、内川の意思疎通が完全に取れていなかったことが、重盗失敗の理由だったのだ。高代氏も、のちに「内川に井端はスタートを切っても無理なら行かないかもしれないから注意するようにと言っておくべきだった。私の責任だ」と反省していた。
 橋上氏が言う。
「あの試合の後で、みんなで反省しました。重盗ではなく、まず井端だけを行けるときに行かせて、一、三塁にして、まだ阿部が打たずに待っているようなら、次に内川が走って揺さぶる形でも良かったんじゃないかと。それなら、あのミスは起きていなかった」
 一、三塁であれば、一塁手がベースにつくので、一、二塁の守備位置も変わり、阿部のヒットゾーンも広がっていたのではないか、という反省だ。
 さらに橋上氏は、こうも言う。
「もうひとつ根本的な間違いがあったとすれば選手選考です。僕たちは希望したのですが、セパの盗塁王が招集されていなかったんです。あの時、走れるのは、本多雄一しかいなかったので、井端に代走も出せなかったし、出すと相手に警戒されてしまうリスクもあった」
 ソフトバンクの本多は2010、2011年と50盗塁以上をマーク、2012年も34盗塁をしていたが、その年の盗塁王は、パが楽天の聖澤諒で54盗塁、セが中日の大島洋平で32盗塁だった。
 橋上氏は2013年の重盗ミスの教訓を生かして欲しいと願う。
「ここから先の2試合は、ちょっとしたミスが命取りになる。僕らの時は走塁ミス。決勝まで進んで米国に敗れた2017年のWBCも、菊池と松田の2つの守備のミスが響いた。アウェーとなる敵地の雰囲気は逆に東京ドームよりもプレッシャーは軽くなるはず」

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