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世界一を奪回した侍ジャパン。MVPの大谷翔平が優勝トロフィーを掲げる(写真:AP/アフロ)
世界一を奪回した侍ジャパン。MVPの大谷翔平が優勝トロフィーを掲げる(写真:AP/アフロ)

なぜ侍ジャパンは世界一を奪回できたのか…栗山監督が成就させた「ハイブリッド・ベースボール」

 橋上氏は投手陣が持てる力をプレッシャーのかかる舞台で発揮できた裏にはダルビッシュの存在があったとの見解を持つ。
「宮崎キャンプから参加したダルビッシュが、若手の目線まで下がってコミュニケーションを取り、彼らの不安を打ち消した影響が大きかったと思う。彼自身は、まだ調整段階で結果を出せなかったが、“楽しく野球をやる”という空気を作ったこともチームの力を最大に引き出すことにつながった」
 一方の打線も粘り強く最後まで得点力を失わなかった。前日のメキシコ戦での逆転サヨナラ二塁打で目覚めた史上最年少3冠王の村上宗隆(ヤクルト)が、2回に観客の度肝を抜く2階のアッパーデッキに届く特大の同点アーチ。4回には岡本和真(巨人)が左中間に一発を放り込み、3-1とリードを広げた。だが、橋上氏は、2回一死満塁からラーズ・ヌートバー(カージナルス)の一ゴロの間に奪った勝ち越しの2点目に注目した。捕手に中村悠平(ヤクルト)を起用したことがポイントだったと言う。
「一死一、二塁から中村が四球を選んだことが効いた。この試合でも日本はトータルで8つの四球を選んだが、日本の打者の選球眼は際立っていた。それも慎重に選ぶ待球ではなく、初球から打ちにいって選ぶ選球だった。これが日本らしさだったと思う。四球をうまく得点につなげた。得点にはならなかったが、山田が、この日、2盗塁するなど、スモールベースボールの良さを残しつつ、パワーでもメジャーの野球に対抗できることを証明した。言ってみれば、大谷、吉田、村上、岡本らのパワーバッターに日本らしいスモールベースボールをも加味したハイブリッド・ベースボール。栗山監督は、大谷が出てきたことで、これまでの野球からの脱却し、パワーでメジャーに対抗する人選をしたが、そこにしっかりと日本らしさも残した」
 これまでどのチームにも見られなかった「ハイブリッド・ベースボール」で侍ジャパンは世界を制したのである。
 ただ米国は、打線にはオールスターメンバーを集めたが、投手陣はベストメンバーには程遠かった。昨年のサイヤング賞のジャスティン・バーランダー(メッツ)や最強左腕のクレイトン・カーショー(ドジャース)らが辞退するなど先発投手が弱かった。
 橋上氏は、「米国に肩を並べたと言っていいが、それはベストメンバーに限るもので、NPBの平均が米国に肩を並べるにはまだまだ」とも指摘した。
 世界一を奪回した侍ジャパンの戦いにはどんな意義があったのか。
「侍ジャパンの戦いと世界一という結果は、野球人口が減っている日本の野球界において少年たちに大きな刺激と夢を与えたと思う。昨年のサッカーのW杯の盛り上がりを正直、うらやましいと思っていたが、今回の盛り上がりは、それ以上だったのではないか」
 橋上氏が監督を務めるBCリーグの新潟アルビレックスは、新潟県内で少年野球教室などを定期的に開催しているが、WBCが始まると同時に入会希望者や説明会への参加への問い合わせが増えているという。大谷への憧れ、世界一への憧れが、日本の野球界を底辺から変えるかもしれない。
(文責・RONSPO編集部)

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