なぜプレミアでゴール量産の三笘薫は第二次森保J初陣で不発に終わったのか…城彰二氏の分析「周囲の連動欠如と起点FWの不在」
この試合のテーマは遅攻からのビルドアップだった。ドイツ、スペインを下して世界を驚かせたカタールW杯ではカウンターとショートカウンターが主な得点パターンでコスタリカ戦に代表されるように自分達がボールを保持して遅攻になった時に相手を崩すことができなかった。初陣では、さっそく、その新しいビルドアップが試された。
後半30分に伊東が右サイドから抜け出してクロスを送り、上田がニアでウルグアイのディフェンスを引きつけ、連動して詰めてきた西村がしっかりと同点ゴールを決めた。試合後に西村がコメントしていたが、短い招集時間の中で練習していたプレーだという。この3人で崩す形も、新しいビルドアップのひとつ。三笘と伊東に個人技で勝負させるだけでなく、こういう連動性があると攻撃に厚みが出てくる。
また伊東、上田が投入されてからは、前線の上田に縦パスを送り、彼が受けて落として崩すという仕掛けを繰り返していた。これならサイドはカットインして縦にも抜けることができる。遅攻からの新しい崩しのパターンを見せてはくれたが、課題は残ったと言った方が正しい。
繰り返すが、前線にボールをキープができる起点があれば、様々なビルドアップのオプションも作れるが、その形は不透明のまま。またディフェンスラインからの押し上げも重たく見えた。
前半は守田―遠藤のボランチコンビが横並びだったためにボールが動かなかった。森保監督の指示で、縦の並びに変わってから、彼らが間でボールを受けるようになってリズムができボールも動くようになった。遅攻からのビルドアップを整備していくには、起点になれるFWの人選と共に、ボランチの連動も重要な要素になるだろう。
出来不出来の波の激しいトップ下の鎌田が、ほとんどボールに触ることができずにピッチから消えてしまっていたので、西村の投入は、むしろ遅いくらいではあったが、彼にとってはアピールにも自信にもなった。代表入りに懸命な新しい選手が入ってくることで、チームに緊張感が生まれ、相乗効果が出る。
新戦力として右サイドバックの菅原も目についた。非常に安定感があり、積極的に右サイドの高い位置を取り精度のいいパスを供給した。その象徴が前半20分に作った決定機だ。鎌田のワンタッチのパスに反応した菅原は、浅野の抜け出しを狙ってディフェンスの裏へ絶妙のグラウンダーのクロスを通した。浅野のシュートミスで得点にはつながらなかったが、菅原の良さが光った。菅原と堂安のコンビネーションも良かった。堂安が下がれば菅原が出ていく。右サイドは機能していた。
新しいDFラインも評価していい。クリアしたボールがアンラッキーな形となってレアル・マドリッドでプレーするバルベルデのさすがの個人技で先取点を失いはしたが、1失点に抑えたことは大きい。吉田、長友、酒井らの年齢を考えると、ここでスパっとDFラインの世代交代を進め、新しいメンバーに経験を積ませていくという決断は間違いではなかっただろう。カタールW杯組の6人は、攻守の切り替えはできるので、板倉、冨安が中心になって経験を積む中で、最終ラインをコントロールしていけば、ある程度の守りの形はできると森保監督も手応えを感じていると思う。
2026年W杯のアジア予選は出場枠も広がり問題なく勝てる。大切なのは、その戦いの中でベスト8の壁を超えるための力をつけること。そのためにも28日のコロンビア戦では、この日、プレー時間がほとんどなかった橋岡、中村だけでなく、半田やバングーナガンデ佳史扶らの新しいメンバーを試してもらいたい。2026年まで時間はあるようでないのだ。
(文責・城彰二/元日本代表FW)