センバツで見つけたドラフトの逸材10人…ノムさん“右腕”の元ヤクルト編成部長が厳選
第95回記念選抜高校野球大会の決勝が1日、甲子園球場で行われ、山梨学院が報徳学園に7ー3で勝利し県勢として春、夏を通じて初の全国制覇を成し遂げた。今大会もプロ注目のドラフト候補が大会を盛り上げた。“名将”故・野村克也氏が最も信頼した“右腕”として知られ、阪神ではスカウト、ヤクルトでは、編成の責任者としてドラフトの指揮を執った松井優典氏に「夏が楽しみなドラフトの逸材」をピックアップしてもらった。
「あるプロのスカウトと話をしたが、今年のセンバツではドラフト1位で競合するような選手は少ないし、不作と言えば不作と言っていた。私も同じ意見だが、高校生は夏へ向けて大きく変わる。ノビシロの部分も含めて、夏から秋のドラフトが楽しみな選手をリストアップした」
松井氏が、投手の中で一番手にあげたのが、大阪桐蔭のエース左腕の前田悠伍だ。1回戦の敦賀気比戦で14奪三振1失点完投。能代松陽戦では救援登板し、準々決勝の東海大菅生戦でも9回を134球で投げ切り1失点にまとめた。最速は147キロをマークしている。
「東海大菅生戦ではカーブを軸に組み立てた。狙い球を外す投球センスがある。変化球や制球力など総合力が一段とアップ、完成度が高い。ストレートは130キロ台が目立ち、そこが物足りないが、打者からすればスピードガン表示以上の体感があると思う。右打者への内角へのクロスファイアーの角度が素晴らしい。1位候補だろう」
センスと完成度で言えば専大松戸の平野大地を評価している。常葉大菊川戦、高知戦と2試合連続の完投勝利。最速は146キロをマークした。
「変化球と緩急の使い方にセンスを感じる。スライダー、フォークとキレと落差がえげつない。ストレートがもっと速くなりそうだし、真っすぐで空振りが取れるようになってくればドラフト上位クラスになってくるだろう」
ストレートの質で「ナンバーワンだった」と買うのが光の升田早人だ。1回戦の彦根総合戦で99球で3安打11奪三振の完封勝利。通称“マダックス”をやってのけた。
「球速は140キロ前半程度だったが球筋がいい。打者の手元で伸びてくるストレートの球質で言えば最も目立った。流行のトラックマンデータで見るならきっと回転数や回転軸が抜群なんだろう。テイクバックがコンパクトでリリースポイントを前に置く投球フォーム。まだ体力はなく時間はかかるが夏に向けてどれだけ伸びてくるか」
素材型として評価したのが、優勝投手となった山梨学院の本格右腕の林謙吾。全6試合で696球を投げ、決勝の報徳学園戦も3失点完投勝利した。高校に入学後、投手転向したというから驚きだ。
「昔からピッチャーをやっていたと錯覚するくらいに、完成度が高く、体が強い。決勝まで6試合中4試合で完投している体力があり、ストレートは、まだ130キロ台だが、ノビシロを感じる素材型」
将来性で言えば、1回戦の石橋戦で2安打12奪三振の完封で能代松陽を初出場初勝利に導いた森岡大智を付け加えたいという。
「まだ未完成だが184センチの長身でボールに角度がある。腕が振れて将来性を感じる」