なぜ阪神の延長12回サヨナラ劇が生まれたのか…岡田監督によって計算されていたシナリオと数々の采配“布石”とは?
富田は150キロの快速球を持っているわけではない。変化球を含めた制球力を生かした配球と度胸で勝負するタイプである。先頭の関根をまずセンターフライに打ち取った。140キロのストレートは逆球だった。
「黄色のユニホームがたくさんあった。その応援をボールにこめて投げる気持ちで」
気持ちで押し込んだ。
二死死から佐野にセンター前ヒットを打たれたが、首位打者経験者の宮崎を見逃しの三振。最後は、センターから見ていた近本が「ビタビタ決まっていた」という142キロのストレートをアウトローギリギリに投げ込んだ。富田は雄叫びを挙げた。
プロ初登板初勝利。お立ち台で「最高です」と声を張った富田は「これからもああいう場面が巡って来るのでいい経験になった」と、岡田監督の意図をくみとっていた。
8回に四球とエラーを絡めた一死一、三塁の勝ち越し機に右の“代打切り札”原口がファウルフライを打ち上げ、二死満塁と、まだチャンスは続いたがWBC戦士の中野がスイングアウト。延長10回一死二塁のサヨナラ機には小幡、坂本が凡退し、11回も二死二塁から大山が森原の失投を打ち損じた。その嫌な流れを富田の魂の21球が断ち切った。
「何回もチャンスがあったけどなあ。まあ、それも野球なんやろ。なんかおかしい開幕(カード)、しんどい開幕(カード)やな」
それも野球…で言えば、横浜DeNAの三浦監督の采配もチグハグだった。
6回に先頭の桑原が二塁打で出塁したが、続く伊藤光にバントではなく強行させた。三塁ゴロで走者を進めることもできず、一死から森がセーフティー気味のバントで送り、代打の大田が見逃しの三振に倒れた。すべての流れが阪神だった。
2試合でスタメンメンバー全員にヒットが出た。中継ぎ陣も全員がマウンドに立った。2連勝という結果と共に今後へつながる最高の試合内容だった。
「うまいことみんなが吹っ切れて完了した。みんながちゃんと仕事して(これからは)普通の打席になるわな。ヒットが欲しい打ち方もないと思うし、どっしりと打席で構えられると思うな」
今日2日には、、岡田監督が沖縄キャンプ初日から絶賛してきた若きエースの才木が先発する。ある意味、今季の“アレ”の命運を握る右腕。
岡田監督は、こう言ってメディアの笑いを誘った。
「試合前に才木に“1人で投げろ”と言いたいよね。9回まで投げろと。明日はリリーフいないぞと言っときます」
対する連敗を食い止めたい横浜DeNAの先発は現役ドラフトで中日から移籍してきた左腕の笠原。才木で勝てば、岡田阪神は、これ以上ない形での開幕ダッシュに成功することになる。
(文責・RONSPO編集部)