“番狂わせ”僅差判定でWBA&IBF新王者となったタパレスが井上尚弥との4団体統一戦を示唆…指名挑戦権持つ亀田和毅の参戦を兄の興毅氏が現地で後押し?!
プロボクシングのWBAスーパー&IBF世界スーパーバンタム級王者のムロジョン・アフマダリエフ(28、ウズベキスタン)が8日(日本時間9日)、米国サンアントニオで同級1位で元WBO世界バンタム級王者のマーロン・タパレス(31、フィリピン)と指名試合を行い、1-2(118―110、113-115が2者)のスプリットデシジョンで敗れて王座から陥落した。下馬評では無敗のアフマダリエフ有利だったが、タパレスは左ジャブと手数で序盤から中盤に貯金を作り、王者の反撃から逃げ切った。このベルトは、7月25日に有明アリーナでWBC&WBO世界同級王者のスティーブン・フルトン(28、米国)に挑戦する元バンタム級4団体統一王者の井上尚弥(30、大橋)が狙う次なる王座。試合後、タパレスのプロモーターのショーン・ギボンズ氏(56)が、井上vsフルトンとの勝者との統一戦の可能性を示唆した。
王者が後半追い上げるも届かず
大番狂わせが起きた。
2団体の統一王者で“モンスター”井上尚弥がターゲットにしていた無敗のアフマダリエフが僅差の判定で王座から陥落したのだ。
ジャッジの1人は118-110で王者を支持したが、残りの2人は115-113でタパレス。「ニューチャンピオン」とコールされた瞬間、タパレスは歓喜の涙を流し、アフマダリエフは無表情のまますぐにリングを下りた。
「勝ったことが信じられない」
タパレスはスタッフやフィリピン国民へ感謝の言葉を伝えた。
サウスポー同士のマッチアップとなったが、タパレスは、ややクラウチングに構え、序盤から徹底して右のリードジャブを出した。そのジャブが邪魔でアフマダリエフが同じサウスポーを攻めあぐみ手数が減った。タパレスは逆に手数で圧倒しながら距離が詰まるとアッパーを叩き込み、6ラウンドにはワンツーをヒットさせて、アフマダリエスがぐらついた。
7ラウンドからは展開が劣勢だと感じた王者が強引に前へ出て、反撃を開始。ロープに詰めるシーンなどを作るが、スタミナ切れが顕著で、本来の正確なパンチがぶれて、空振りが目立つ。タパレスはポイントを失っても固いガードで決定打だけをもらわないように集中していた。
最終ラウンドを前にタパレスのトレーナーは「あと3分だぞ。守り通せ」と指示。互いにこのラウンドが勝敗を分けると踏んでいたのか、壮絶な打撃戦となり、タパレスが突っ込んでくるところに王者が放った右のジャブがカウンターとなってヒット。タパレスは大きくよろけてキャンバスに右手をつきかけたが、ギリギリ、数センチのところで、なんとかこらえた。ここで、もし手をついていれば、ダウンと判定され、この回は10-8となり2者の採点はドローとなり、王者は防衛に成功しているところだった。
まさに命運を分けた数センチとなった。
「本当に大きな意味のある勝利。私は、この試合のためにハードワークを貫いたんだ」
リング上でアナウンサーが7月25日に日本で行われる、もう1人の2団体王者フルトンと井上の世界戦について質問すると隣にいたタパレスの共同プロモーターであるMPプロモーションズのギボンズ氏が割って入り「我々がその戦いのリングサイドにいる」と語った。
つまり井上vsフルトンとの勝者との4団体統一戦を示唆したのだ。タパレスも「どちらが勝っても準備ができている」と、4団体統一戦を受けて立つ意志を伝えた。
気の早いフィリピンメディアの「マニラスタンダード」は、「タパレスが2団体王座を獲得し、井上との戦いに近づいた」と報じたほど。