なぜ阪神の岡田監督は完全試合続行中の村上頌樹を7回で降板させたのか…中日監督時代の落合博満氏の日本シリーズ采配との共通点
伝統のGT戦が12日、東京ドームで行われ、阪神が2-1で巨人に勝利した。先発の3年目の村上頌樹(24)が7回までパーフェクトを続行していたが、岡田彰布監督(65)は、8回一死から代打を送り降板させた。ドームが騒然となる仰天采配は、後を受けた石井大智(25) が岡本和真(26)に今季1号となる同点本塁打を浴びて裏目に出て試合は延長にもつれこんだが、10回に勝ち越しに成功し、ストッパーの湯浅京己(23)で逃げ切った。なぜ虎の指揮官は仰天采配を決断したのか。
仰天采配は裏目
東京ドームが騒然とした。
1-0で迎えた8回一死。岡田監督が7回までパーフェクトピッチを続行中だった村上に代えて、代打の原口を打席に送ったのだ。「怪我でもしたのか?」「まさか」「あり得ない」。SNS上では賛否が飛び交い、またたくまに「岡田監督」が検索ワードでトレンド入りした。
しかも、8回からバトンを渡された石井が先頭の岡本に初球を捉えられて同点アーチを許す。この時点で仰天采配は完全に裏目。だが、勝ち越しは許さず、延長にもつれ込んだ10回に一死三塁のチャンスから近本が左前に決勝タイムリーを放ち、“守護神“湯浅で、その1点のリードを守り切った。
試合後の話題は、当然、この仰天采配である。
岡田監督は、テレビのインタビューでは、「頭のなかでずっとね。完全試合いけたんかなあというのは残ってますね。ちょっと片隅にね」と采配を振り返り、「6回も(継投を)考えたんだけどね。7回に打順とかが回ってくるアレで。初めてやったんで完全試合の継投というのはね。でもあそこまで投げたら合格点。みんなで完全試合というのも頭をよぎったんでね」と続けた。スポーツ各紙の報道によれば。岡田監督は、その後の囲み取材で、村上の続投条件として「3点差あれば」「(千葉ロッテの)佐々木朗希ならいかせていた」などとも明かしている。
そもそもプロ3年目でまだ未勝利の村上は怪我で出遅れている伊藤の代役だった。4月1日の横浜DeNA戦では秋山が先発抜擢され、村上は第2先発として待機してマウンドに上がったが、打順の巡りもあり1イニングで降板していた。その投球内容も良く、沖縄キャンプ中から村上の球速アップなどの成長度は評判で、受けているキャッチャーからの評価も岡田監督の耳に届いていた。
岡田監督は、8日のヤクルト戦の先発に村上を予定していたが、大竹の広島での先発予定が雨で流れ、このヤクルト戦にスライドさせたため、またしても村上の先発がとんだ。まだプロで1勝もしていない村上の立場は、谷間の谷間。この日は、丁寧に低めをつき、コンビを組んだ坂本が、打者の目先を変えるストレートをうまく配球に織り交ぜながら巨人打線をパーフェクトに抑え込んでいたが、元々は、いけるところまで飛ばせという先発だったため、70球を超えたあたりからストレートの伸びに少し陰りが見えて空振りも取れなくなっていた。岡田監督の頭には継投策が浮かんでいた。7回のオコエから始まる打順で、もし先頭を出すことになれば、丸、梶谷と、左が2人並ぶところでは左腕の富田の投入を考えていたほどだった。球数は84球だが、実際の疲労度は、100球超えに相当するものがあり、まだ岡田監督が絶対的な信頼を置くまでの格付けが村上にはなかったのである。
しかも1点差。“並みの監督”なら、村上が1本ヒットを許すまで続投させていただろう。だが、もし村上をヒットが出るまで続投させていれば、その一人の走者から狭いドーム球場だけに一気に逆転されてしまう危険性がある。すべては“たられば”。もしかすれば村上はパーフェクトをやってのけたかもしれない。岡田監督は究極のマイナス思考で采配を組み立てる。だから岡田監督は「3点差あれば」と言ったのだ。岡本に同点本塁打は許したが、走者がいなかったため逆転はされなかった。