なぜ阪神の岡田監督は完全試合続行中の村上頌樹を7回で降板させたのか…中日監督時代の落合博満氏の日本シリーズ采配との共通点

　パーフェクト続行中投手の降板で思い出すのは、落合博満氏が中日監督時代の2007年の日本シリーズ第5戦だ。
　日ハムを相手にパーフェクト続行中だった山井大介を8回で降板させ、ストッパー岩瀬仁紀に交代させた仰天采配である。
　日本シリーズでの完全試合は史上初だったが、落合監督は記録よりも日本一を優先させ、継投での完全試合を達成してナゴヤドームで宙に舞った。だが、当時は、その采配は賛否を呼んだ。批判的な意見が多くを占め、故・星野仙一氏も強烈に批判した。
　岡田監督の解説者時代にアルコールを入れながら何度となく「岡田さんならどうしました？」と聞いたことがある。
「そりゃ交代よ。落合采配は普通のことよ。俺でも岩瀬でいってるよ」
　それが岡田監督の答えだった。
「確か3勝1敗やったやろ。負けたら3勝2敗で敵地へ移動よ。落合監督は日本一にはなっていないという壁があった。勝負の流れは、たったひとつの出来事で変わる。しかも、シーズンを岩瀬で勝ってきたチーム。そりゃ岩瀬よ」
　うろ覚えではあるが、そんな話をしていた。
　岡田監督は、選手の個人記録や記念日を非常に大事にする。岡田監督が前政権時代に連続フルイニング出場の記録を継続していた元監督の金本知憲氏がデッドボールを受けて腕を骨折しながらも記録を途切れさせないために出場を強行させたのは有名な話。だが、勝利よりも個人記録が優先という考え方はない。あくまでも個人記録は、チームの勝利に勢いをつけるものでなければならない。その岡田イズムに照らし合わせて、村上の実績と現時点での力量、点差などのゲーム展開を考慮すれば、パーフェクト続行中の村上の降板にも納得はいく。
　当の村上はどう思ったか。おそらく岡田監督のことだからフォローはしているだろう。
「次は1点差でも村上を続投させる」という指揮官の信頼を勝ち取り、もう一度、阪神では過去に誰も成し得ていない大記録にチャレンジしてもらいたい。岡田監督は村上のローテー入りを約束している。順当にいけば村上の次回登板は19日の甲子園での広島戦だ。
（文責・RONSPO編集部）