なぜ”ミライモンスター”松本圭佑は史上初の父子同階級の日本フェザー級王座を獲得できたのか…井上尚弥ら「チーム大橋」の結束
松本にとって父は憧れのボクサーである。
父は世界挑戦経験が3度ある元OPBF東洋太平洋フェザー級王者で日本同級王座は3度獲得している。自宅に残っている父のビデオテープの映像は世界戦だけでなく日本タイトル戦まですべてを見た。減量苦でもフェザー級にこだわるのは、その父の階級に「ロマンを感じる」からだ。父子2代での日本王座獲得は、野口進と野口恭、カシアス内藤と内藤律樹、寺地永と寺地拳四朗に続き4組目だが、同階級での達成は史上初である。
ーーまずは一つ目のタイトルを取った。父を超える目標の現在地は?
そう聞くと松本は「肩書は並べたかもしれないが、内容はまだまだ、自分は(現役時代の父よりも)劣っている」と謙虚に答えた。
試合後は、マネージャーを務めるタレントで格闘家のボビー・オロゴンに連れられて会場にいた次の有力対戦候補のオイコラが、大声を出してわめきちらし、リングサイドにまで上がって、松本に「俺は準備ができている。俺と戦え」と対戦を要求した。
「挑発しているんだろうなと思ったけれど、何言っているかわからなかった(笑)」と、松本はガン無視。
父もリングを下りる階段に立ちふさがっていたオイコラを「ちょっど危ないからどいて」と蹴散らした、
オイコラは、ボビー・オロゴンが、昨年ナイジェリアからスカウトしてきた“輸入ボクサー”で、母国ではJBC非公認のWBFインターナショナルスーパーフェザー級王座も獲得している。来日してから4戦3勝1分けの成績で、今年3月には後楽園で2021年のスーパーフェザー級新人王で同19位の李鎮宇(角海老宝石)と引き分けている。みかけほどパンチ力はないが、身体能力を生かしたスピードのあるアウトボクサーでディフェンス技術も高い。
現在ランキング4位だが、4月の更新では1位になると見込まれており、3か月以内を期限にした指名試合の相手となる。
松本も映像を少し見たことがあるそうで「動きが柔軟で、やり辛さ、一発怖いパンチもある。立体的な動きがある印象」と警戒するが、マッチメイクをしている大橋会長はこう明言した。
「圭佑の本当の実力はこんなもんじゃない」
“ミライモンスター”はまだ“ミライ”の3文字の1文字くらい取ったに過ぎない。
「会長が言う自分が持っているポテンシャルをさら発揮できるように、移動、テクニック、タイミングにこだわって、倒そうとせずテクニックを見せていければいい。まだまだ課題はあるが、そこは改善できるもの。まだまだ成長できる。世界には強豪、日本にも強い選手はいる」
父が果たせなかった世界ベルト獲得の夢へ向けて“ミライモンスター”は確かな一歩を踏み出したのである。