阪神・岡田監督の新井カープを翻弄した“深ーい”采配を読み解く…虚をつくセーフティスクイズに右打者・會澤に左腕・岩貞をぶつけ“4割打者”木浪に犠牲バント
阪神が19日、甲子園で好調の広島に6-1で連勝、再び単独首位に浮上した。冴えわたったのが岡田彰布監督(65)の采配だ。打線を活気づけるための積極采配と、手堅くバントを織り交ぜ、7回のピンチには右打者の會澤翼(35)に左腕の岩貞祐太(31)をぶつける仰天継投。前阪神監督時代に4番を任せた広島の新井貴浩監督(46)の采配とは対照的なタクトでカードの勝ち越しを決めた。
セーフティバント&エンドランの仕掛け
甲子園の一塁ベンチの定位置から岡田監督のブロックサインが発令された。大竹、遠藤の両先発の好投で、互いにあと1本が出ず、0-0の緊迫した試合展開で迎えた5回だ。佐藤の打ち取られた打球が、いわゆるレフト、サード、ショートの間の“魔のトライアングル”にポトリと落ちて、佐藤は二塁へヘッドスライディング。今季初めてスタメンに抜擢された井上が右方向を意識しておっつけてライト前へふらっとした打球を落として無死一、三塁のチャンスを作った。打席は7番・坂本。岡田監督は、その初球にセーフティースクイズのサインを送ったのだ。惜しくも一塁側のファウルとなったが、広島バッテリーは完全に無警戒だった。
「1点が欲しかった。なんとか先に1点を取りにいった」
岡田監督の意志は坂本のバットに伝わった。
2球連続のセーフティースクイズを仕掛けるかもと想像したが、「打て」のサインに切り替わり、坂本はライトへ飛距離十分の先制の犠牲フライを打ち上げた。
「なんとか先に点が欲しかったので、なんとかなってくれと思って振りました」
さらに岡田監督は動く。なお一死一塁から続く木浪の初球にエンドランのサインを出したのだ。ファウルになったが、4日の広島戦以来5点以上取れていない打線を活気づかせようとする意図の込められたサインだった。
カウント1-2から再びランエンドヒット。三塁ゴロに倒れたが、ベンチの積極的なサインが、波動となって眠っていた打線を目覚めさせる。6回には先頭の近本が三塁打、一死からノイジーが持ち味であるセンターから右方向の打球を意識する打撃で右中間へタイムリー二塁打。さらに二死となってから打率1割台で、第1打席はインハイのストレートを振らされていた佐藤が「コンパクトに行け」という岡田監督の助言を脳裏に刻んだかのように追い込まれてからチョコンとバットを出して三遊間に軽打。貴重な3点目を刻む。
7回にも先頭の坂本が四球で歩き、バッテリーエラーで二塁に進むと、打率4割を超えている木浪に手堅くバントで送らせた。
「後ろのピッチャーのためにも、もっと点を取りたかった。負けてるチームの攻撃みたいになったけど、あとのピッチャーもそれで楽になる」
代打の原口が四球でつなぎ、近本の2点タイムリー二塁打、中野の連続タイムリーで3点を追加して勝負を決めた。
「開幕以来か。そんなに(打線の)悪いのは続かない。向こうの遠藤もよかったし、どこかで後半は(チャンスが)あるかなあと思っていたが、うまく点がとれた」
岡田監督の記憶通り6点を刻んだのは開幕カード第3戦(2日)横浜DeNA以来となる。対照的に広島の新井監督は動かなかった。
3回に一死から會澤が右中間を破る二塁打で出塁したが、続く遠藤に、普通に打たせて三振。トップに返って菊池もセカンドフライに倒れ先制機を逃した。新井監督は「初回にバントはしない」という方針を貫き、ここまでチームでの犠打は、前日の阪神戦でようやく「1」を記録しただけ。元タイトルホルダーの某プロ野球OBは「両軍ベンチの采配力の差が勝敗を分けたのではないか」という見方をしている。
「新井監督のぶれない方針はわかる。遠藤のバッティングは悪くない。バントを失敗して投球に影響が出ることを考えたのかもしれない。だが、最善というならば、たとえ二死になっても三塁に走者がいた方がバッテリーにプレッシャーはかけられる。一方の阪神は7回に打撃面で期待のできる木浪に確実にバントで送らせ制球に不安のある黒原にプレッシャーをかけた。ベンチがどう最善の舞台を作るのか、という点での差が出た試合だった」