阪神・岡田監督の新井カープを翻弄した“深ーい”采配を読み解く…虚をつくセーフティスクイズに右打者・會澤に左腕・岩貞をぶつけ“4割打者”木浪に犠牲バント
岡田監督の采配は継投策でも光った。
7回に無失点を守ってきた大竹が先頭の秋山に二塁打を許す。なお一死一、三塁からデビッドソンのライトとセカンドの間に上がったフライを中野が後ろ向きにキャッチするというスーパープレーを見せたが、上本にレフト前にタイムリーを浴び1失点で、二死二、三塁となると、右打者の會澤のところで左腕の岩貞を投入したのだ。近代野球では、もう左右は関係なくなってはきているが、會澤は、昨季対左腕に打率258で、右腕には打率.179で左腕を得意としている。
岡田監督には、ある狙いがあった。
「2人で1人。満塁になっていいから、どっちかで(勝負)」
一塁は空いていた。會澤か、ネクストバッターズサークルにいた左の代打の松山か、どちらかと勝負して、ひとつアウトを取ればいいと坂本に指示したのだ。
岡田監督が左腕の岩貞で勝負したのは、回跨ぎを想定していて「相手は左の代打ばかり」という広島の代打メンバーを見透かしてのもの。右打者は堂林と石原の2人だけ。石原は3人目の捕手だから使えず、実質は、堂林1人。岡田監督は「ここは堂林で来るかも」とも考えたが、広島ベンチで準備していたのは左の松山だった。
「緊張した」という岩貞だが、こういう場面での経験値がある。會澤に対して丁寧に低めに変化球を集め、スライダーを三塁線にいい当たりのファウルを打たれ、一瞬、ヒヤっとしたが、カウント3-1から、同じボールをもうひとつ低くコントロールして引っかけさせた。三塁ゴロに打ち取ると、8回に回跨ぎして、三者凡退。“守護神”の湯浅が不在の中、岡田監督は代役の新ストッパーとして岩崎を使うことを決めていたそうだが、点差が開いたため最後はKケラーで締めてゲームセット。継投策にも岡田監督の“野球脳”が冴え渡った。
ルーキーの森下と交代で2軍から上げてきた井上をスタメン抜擢して貴重なヒットが1本出て、不振の佐藤も、内容はよくないが、気分的に楽になるタイムリー&マルチ安打。首位固めをするための好材料が少しずつではあるが揃ってきた。
同一カード3連勝を狙う今日20日の先発は西純矢。
岡田監督は薄笑いを浮かべてこう話す。
「西もねえ。この前の巨人戦で一つ勝ったが、ずっとあまり調子が良くない。ずっと言っているけどね。でもまあ、これで自分だけ負けられないでしょう」
球威に頼りすぎて勝負どころでの制球が安定しない西純矢だが、岡田監督は、好投を見せた西勇輝、大竹に続くプラスの連鎖を期待している。