なぜF1角田裕毅は豪州、アゼルバイジャンGPで連続入賞を果たせたのか…背景に“名伯楽”の教え
F1第4戦アゼルバイジャンGPでアルファタウリの角田裕毅(22)が、前戦オーストラリアGPに続いて連続入賞を果たした。オーストラリアGPと同じ10位だが、今回の入賞はオーストラリアGPよりも内容が濃い。
今年のF1はレッドブル、アストンマーティン、メルセデス、フェラーリがトップ4を形成している。アゼルバイジャンGPではそのトップ4の8人のドライバーが今シーズン初めて全員完走し、上位8位までを独占。その他のチームのドライバーがポイントを獲得するには、残り2枠しかなかった。
その12人による戦いに勝ち残ったのが、9位のランド・ノリス(マクラーレン)と角田だった。しかも、アゼルバイジャンGP開幕前の時点で、マクラーレンがランキングでトップ4に次ぐ5位に位置していたのに対して、角田が所属するアルファタウリはウイリアムズと並んで最下位だった。つまり、順当にいけば、もう1台のマクラーレンが10位を獲得するところだった。
しかし、角田はマクラーレン勢の間に割って入り、最後の1枠をもぎとった。それゆえ、今回の角田の入賞は10位で獲得した1ポイント以上の価値があるといっていいだろう。
トップ4チーム以外のドライバーで複数回入賞は3人だけ
今シーズン、角田はこのアゼルバイジャンGP以外でも好調な走りを披露している。開幕戦のバーレーンGPと第2戦サウジアラビアGPは惜しくもポイントは逃したが、11位完走。その後の2戦で10位入賞している。トップ4チーム以外のドライバーで複数回入賞しているのは、じつは角田以外に2人しかいない。ノリスとピエール・ガスリー(アルピーヌ)で、角田と同様、ともに2回だ。
ただし、ノリスが入賞できなかった2つのレースの順位はいずれも17位。ガスリーもリタイヤと14位だった。アゼルバイジャンGP終了時点でのドライバーズ選手権のランキングは16位だが、序盤4戦でトップ4チーム以外のドライバーの中で、最も安定した成績を残しているのが、角田だったということになる。
なぜ、今シーズンに入って、角田は好調な走りを維持できているのだろうか。それは、アルファタウリのチーム代表を務めるフランツ・トスト代表の存在が大きく影響していると言っていいだろう。
トストはこれまで多くのトップドライバーを自らのチームで育成してきた名伯楽だ。その中には4度王者に輝いたセバスチャン・ベッテルや現役王者のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)もいる。それ以外にも2020年のイタリアGPで優勝したガスリーや、昨年のイギリスGP勝者のカルロス・サインツ(フェラーリ)も、トストのチームでレーシングドライバーとしての基礎を学んだ。
そのトストが率いるアルファタウリで2021年にデビューした角田も過去2年間、多くのことを学んだ。そのひとつが、バトルだ。
1000分の1秒をかけて走るF1の世界では、ラップタイムでコンマ数秒の間に何台ものマシンがひしめきあうほど実力が接近することが珍しくない。そうなるとレースではバトルが繰り広げられる。特にスタート直後はサイド・バイ・サイドの戦いが常に起きる。今回のアゼルバイジャンGPでも、それは何度も見られた。
このサイド・バイ・サイドの戦いで犯してはならない基本的ミスのひとつが接触だ。接触によってダメージを受ければ、元も子もない。さらに自分にダメージがなかったとしてもペナルティを受ける場合もある。モータースポーツである以上、接触を避けることはできないが、それでも可能な限り避けることが一流ドライバーには求められる。
それ以上に、サイド・バイ・サイドの戦いで犯してはならないことがある。それは「バトルから引く(やめる)」ことだ。戦えないドライバーはもはやレーサーではなく、トストが最も嫌う行為だ。