なぜ浦和レッズは枠内シュート「ゼロ」で5大会ぶり3度目のACL優勝を成し遂げたのか…ベテラン2人が知る4年前の悔しさと前線ハイプレスの新スタイル
興梠が振り返った4年前の2019年大会では、決勝でくしくもアル・ヒラルと対戦。敵地での初戦を0-1で、ホームでの第2戦を0-2で落とした。累積警告で出場停止だった初戦から、満を持して第2戦で復帰するも敗れた悔しさを、西川も忘れていなかった。
「2019年のリベンジも込めて0点に抑えたかった。2019年の表彰式での悔しさは、いまでも鮮明に覚えている。今日は絶対に笑顔で帰ろうと思っていたので」
前半5分に相手選手と接触。ピッチ上で治療を受け、リザーブのGK鈴木彩艶(20)がアップを始める緊急事態を「正直、あれで目が覚めた」と振り返った西川は、前半21分、42分、後半45分とビッグセーブを連発。アル・ヒラルの枠内シュート4本をすべて空砲に変えた。
ACLの悔しさはACLでしか晴らせない。興梠も西川も個人として4年越しのリベンジを誓い、同時にともに浦和在籍10年目を迎えるベテランとして、前回にアジアの頂点に立った2017年大会の成功体験を、後輩たちにも味わってほしかった。西川が言う。
「決勝が初めての選手もいたし、若手の成功体験としても絶対に取りたかった。ここ(ACL)でやれる自信がつけば、間違いなく日本代表にも入っていける選手がたくさんいる。もちろん自分もまだまだ目指していきたいし、その意味でも勝って歴史に名を刻んだのは大きい」
2017年大会決勝もアル・ヒラルが相手だった。敵地での初戦を1-1で引き分け、ホームでの第2戦を1-0で勝った展開もまったく同じ。ただ、当時を戦ったメンバーで今シーズンも残っているのは西川と興梠だけ。盟友も同じ気持ちだったはず、と西川が続ける。
「一番後ろには自分がいて、前線には(興梠)慎三がいて、サイドには(酒井)宏樹がいて、そして真ん中には岩尾がいる。ベテランがしっかりと仕事をすることで、若い選手が伸び伸びできると思っていた。今日は前線から慎三が何度も追ってくれた。頑張ってくれる姿勢を見ると、後ろの自分たちも勇気づけられた。逆に自分がしっかり守ればという思いが強かったですね」
ベテランにけん引された若手や中堅の象徴が伊藤敦樹(24)となる。埼玉県浦和市(現さいたま市緑区)で生まれ育ったボランチは、浦和サポーターの両親とともにホーム、アウェイを問わずにスタジアムのゴール裏で応援。浦和が初めてACLを制覇した2007年大会のセパハン(イラン)との決勝第2戦へも、当時9歳だった伊藤は駆けつけている。