なぜRIZINで朝倉海は戦慄の左ヒザ爆弾によるKO復活を果たせたのか…7月にベラトール元王者アーチュレッタとのタイトル戦決定も「5」か「3」かのラウンド数を巡って”火花”
不安はなかったのか?
試合後のインタビュースペースで、そう質問すると「不安はなかった」と答えたのちに「負けたときの不安はあった。プレッシャーは多少あった」と言い直した。おそらくそれが本音。そのネガティブ要素を取り除いた要因を「たくさんの練習と(相手の)分析で作った勝てるという自信じゃないですか」と自己分析した。
拳の手術で欠場を余儀なくされた期間を使い、米国へ2度修行に出た。今回からコンビを組んだ散打も知るエリー氏と知り合ったラスベガスのシンジゲートジムでは、世界最高峰の総合格闘技団体UFCの世界バンタム級1位のメラブ・ドヴァリシヴィリ(ジョージア)らとスパーリングをして世界トップレベルのタックルを体感した。
元谷に「凄く粘り強かった」と言わせた裏には、「もっとテイクダウン能力の高い選手とがんがんレスリングをして耐えてきた」という自負がある。
朝倉が、ボクシング技術の習得に定期的に通っているジムの某コーチは、こんな話をしていた。
「とにかく貪欲で研究熱心なんです。フェイントはどうすればいいか、コンビネーションに新しいものはないか、と向上心が半端でなく、しかも教えたことを吸収するスピード、処理能力が高い。どうしても総合の選手は、後ろ重心で、パンチに体重が乗ってこないんですが、その難解なシフトチェンジもすぐに会得する。パンチの威力は、この階級のボクサーのランカークラスと言っていい。強くなる格闘家の条件を兼ね備えています」
この姿こそが、朝倉海復活の理由なのかもしれない。
試合後、リングに上がった榊原CEOは、元ベラトール王者の底力を見せつけて井上に1ラウンドの劣勢から逆転で判定勝利していたアーチュレッタと朝倉の対戦を7月に堀口の返上で空位となったRIZINバンタム級王座の決定戦として実施することを発表した。今回のダブルメインイベントは、事実上のRIZINバンタム級王座トーナメントの準決勝だった。
榊原CEOは「5連勝で油の乗っていた元谷相手にKO勝ちの離れ技を有言実行でやったことには驚かされた」とシナリオを守った朝倉のファイトをベタ褒めした。アーチュレッタが、リング上に招き入れられ、両者は笑顔で握手を交わしたが、バックステージでは早くも火花が。
「朝倉海は、爆発力のあるフィニッシャーだが、深海に引きずり込み窒息させたい。試合には相性があるが、彼とのドッグファイトならオレが生き残る。汚い試合をしたいね」
アーチュレッタは、お決まりのフレーズで抱負を語ったのちに「タイトルマッチなのだから5分5ラウンドでやりたい。1ラウンド25分でもいい」とRIZINでは異例の5ラウンドマッチを要望したのだ。