不思議な人生ドラマ…阪神戦で22年連続勝利の日本タイ記録を達成したヤクルト43歳の石川雅規は“長嶋巨人”への入団が内定していた
ヤクルトの石川雅規(43)が10日、甲子園球場で行われた阪神戦に先発、6回途中までを4安打無失点に抑え、今季初勝利、入団以来、22年連続勝利の日本タイ記録の偉業を成し遂げた。帽子を計8度も脱いでファンの声援に応えた誠実な人柄。実は、22年前のドラフトでは、一度は巨人に入団が内定していたという裏話があった。
「一人でできる記録ではない」
敵地の甲子園でヤクルトファンから温かい声援が飛ぶ。
「一人でできる記録ではないので家族にも感謝したいですし携わってくれた人、そしてファンの皆さんに本当に感謝したいと思います」
石川はヒーローインタビューの前後で計8度も帽子を取って感謝の意を示した。その度に、半分白髪でグレーになった髪が姿を現す。
プロ22年目の43歳。公称1m67の“小さな巨人”が偉大なる日本記録に並んだ。阪急、阪神、近鉄で通算350勝を挙げた米田哲也氏に並ぶ22年連続勝利記録を今季3度目の先発で成し遂げたのである。しかも6回一死までスコアボードにゼロを並べ三塁を踏ませない素晴らしい投球内容だった。
「22年連続勝利もそうですけれども、今シーズンの初勝利というのは本当に早く手にしたかったので、みんなに声をかけてもらいました」
ベンチで祝福された石川は安堵の表情を浮かべていた。
ストレートの最速は134キロだった。力感もなく、ひょいと投げる投球フォーム。簡単に打てるようで打てない投球が真骨頂である。多彩な変化球を交え、まるで心理学者のような配球と熟練の投球術。
3回に梅野、木浪に連打を浴びて無死一、二塁とされ打席に西勇を迎えた。100%バントの場面だが、一塁のオスナのチャージと連動した投球術で簡単には三塁に進ませない。三塁側を狙う西勇に対して一塁前にバントをさせようと外角ギリギリに緩い変化球。西勇は、三塁側を狙いすぎて2球続けてファウルとなった。カウントが2-2となって阪神ベンチはバスターのサインに切り替えたが、その直前に西勇が三塁コーチにサインの確認に歩いてことで石川ー中村のコンビは、それを読んでいた。ファウルにさせ、2球連続のバスターはボテボテのショートゴロ。ショート長岡の好判断もあって三塁で封殺。だが、まだピンチは続く。一死一、二塁で得点圏打率が5割を超える近本である。
石川はファウルでカウントを稼ぎ、110キロの抜いたカーブを投じた。力んだ近本はショートへのインフィールドフライ。続く中野も得点圏打率.348の要注意打者だったが、外、内と揺さぶり、130キロ、131キロの裏をかいたストレートを2球続けると中野はバットを出せなかった。カウントを整えてから最後はインローのボールゾーンにシンカーを落として中野に引っかけさせた。一塁ゴロ。極上の投球術だった。
走者を置いてからの粘りが信条である。2点のリードをもらった4回も一死から大山にセンター前ヒットを打たれたが、佐藤に徹底した外角攻め。ほぼ同じコースにストレート、カット、スライダーで緩急をつけ、最後は外角低めに構えた中村のミットに寸分違わずにスライダーを投じて佐藤は泳いでセンターフライ。井上にはボールゾーンのシンカーを上手くすくわれて、レフトフェンスギリギリまで運ばれたが、わずかにバットの先に芯を外していて、最後のひとのびをさせなかった。