なぜ井上尚弥との対戦を夢見る“ネクストモンスター”候補の堤駿斗とABEMAは独占配信スポンサー契約を結んだのか
プロ転向3戦目でOPBF東洋太平洋フェザー級王座決定戦に出場する堤駿斗(23、志成)が動画配信サービス「ABEMA」と年間スポンサー契約を結んだことが11日、発表された。堤の試合の独占配信を行うものでABEMAが、ジムやプロモーターではなく個人と契約を結ぶのは極めて異例。その独占配信の第1弾が、31日に後楽園ホールで行われる同級4位のジョー・サンティシマ(26、フィリピン)とのタイトル戦だ。堤は将来的にバンタム級の元4団体統一王者、井上尚弥(30、大橋)との対戦を実現したいという大きな目標を掲げた。
31日にプロ3戦目でOPBF東洋太平洋フェザー級王座決定戦に挑む
これも時代なのだろう。
プロボクシングのライブ配信を巡っては、アマゾンプライムビデオ、NTTの「Lemino(レミノ)」、U-NEXT、ABEMAの4社が競合。地上波から配信へと劇的な変化を見せているが、ABEMAが、「日本で最も将来が有望されている」と堤に目をつけて選手個人の囲い込みに動いた。
スポンサー料は不明だが、関係者によると現在堤が契約しているスポンサーの中では最高額の部類。ABEMAは、アマ13冠で日本人として初めて世界ユースで金メダルを獲得するなど「アマ最高傑作」と呼ばれた堤にプロデビュー戦時から興味を抱いていたという。プロ転向後の2戦はいずれも判定決着だったが、そのスター性と潜在能力を高く評価した。
1か月ほど前にあった異例の申し出に、堤自身は「ビックリはしなかった」そうだが、「いいチャンスが巡ってきた」と胸を躍らせた。
「光栄だし、より気がひきしまる。期待を裏切らないように成長して、将来、世界王者になるまでの過程をABEMAを通じで、より多くの人にお見せできたらいい。これを機にボクシングに興味をもってもらえるようにボクシングの良さを伝えられるボクサーになれればいいなと強く思った」
契約を結んだABEMAの独占配信の第1弾が、20日後に控えているサンティシマとの東洋タイトル戦だ。サンティシマは3年前にWBO世界スーパーバンタム級王者でビッグネームのエマヌエル・ナバレッテ(メキシコ)に挑戦したことのある27戦22勝(19KO)5敗の実力者。その試合は11回TKOで敗れているものの、前に出てプレスをかけてくる好戦的スタイルで、KO率が示すように右のストレート、右のボデイに一発の威力を持つ。
ただ昨年12月の前戦は、6月29日に日本スーパーバンタム級王座決定戦に出場する下町俊貴(グリーンツダ)にアウトボクシングでさばかれて判定で敗れており、堤も「相手のプレスをスピードでうまくさばきながら、攻めるポイントを逃さずに勝ちに徹したい。チャンスがあればもちろんKOで決着をつけたい」との戦略を抱く。
この7日に帰国するまで、約1か月、米国ラスベガスで、イスマエル・サラストレーナーのもとでスパーリングを中心とした合宿を張ってきた。
元WBA、IBF世界スーパーウェルター級王者フェルナンド・バルガス(米国)の三男でライト級のプロスペクトと評されているエミリアーノ・バルガスや、WBC世界スーパーフェザー級2位のパブロ・ビセンテ(キューバ)ら世界のトップランカーと週に3度のペースで計60ラウンドのスパーを重ね「さらにレベルアップするための課題をつかんだ」という。
それは「前の手を使えずリズムをつかんでいないときに無理に強く打ちにいってもタイミングが合わないだけ」という試合のペースをつかむセオリーのようなもので、「世界でも通用する、そのレベルになっていく自信がある」との実感を得た。